親や配偶者が死亡したときに発生する相続、そしてそれに係る相続税ですがどのようなイメージがありますでしょうか?「相続財産の半分を持っていかれる…」なんて話もあるくらいですから、あまり良いイメージはないかと思います。
しかし、実際、死亡者数に対する相続税の課税件数の割合がどれくらいかというと、全体の8%ほどしかありません。
つまり、ほとんどの相続人は税金を払っていないのです。なぜこのようなことが起こるのか具体的な金額で計算しながらご紹介したいと思います。
相続税の計算の仕組みって?
相続税は実際に相続又は遺贈により財産を取得した人が納付するため、次のように4つの段階ごとに計算が行われ計算されます。
第1段階 (課税価格の計算)
相続又は遺贈により財産を取得した人に係る課税価格を個々に計算し、その後、全ての者の 相続税の課税価格の合計額を計算する。
第2段階 (相続税の総額の計算)
課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した残額を基に相続税の総額を計算する。
第3段階 (各相続人の算出税額の計算)
相続税の総額を各相続人が取得した財産割合に応じ配分し、各人の算出税額を計算する。
第4段階 (各相続人の納付税額の計算)
各相続人の算出税額から各相続人に応じた各種の税額控除額を控除し、各人の納付すべき税額を計算する。
分かりやすい相続税の出し方
計算の仕組みには4段階あると紹介させていただきましたが非常に分かりにくいと思います。なので、例を挙げてご説明します。
第1段階と第2段階…相続税の総額算出まで
例)配偶者、子供3人 相続総財産7,200万円 とします
① まず、基礎控除を求めよう
基礎控除とは、相続税の課税最低限度額です。遺産に係る基礎控除額よりも課税価格の合計額が少ない場合には、相続税は課税されません。実はこれが非常に高く設定してくれているお陰でほとんどの方は相続税が非課税となっているのです。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例を当てはめると…3,000万円+600万円×4人=5,400万円となります。つまり、相続総財産が5,400万円より少なければ相続税は非課税となるのです。
② 基礎控除を反映させた金額を算出しよう
求めた基礎控除額を相続総財産から控除します。これが税率を乗じる前の金額となります。
例に当てはめると…7,200万円 - 5,400万円 = 1,800万円
③ ②を基に相続税総額を算出しよう
相続税に使用する税率や控除額をまとめると次のようになります。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | - |
1000万円超3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
上図を今回の例に当てはめると、
配偶者 1,800万円×2分の1=900万円
900万円×15%-50万円=85万円
子供 1,800万円×6分の1=300万円
300万円×10%=30万円
相続税総額 85万円+30万円×3=175万円
第3段階から第4段階…実際の各相続人の相続税額
例1)実際の遺産相続持分を 配偶者2分の1 子供 各6分の1とする
配偶者 175万円 × 2分の1 = 87万5,000円
子供 175万円 × 6分の1 = 29万1,600円
例2)実際の遺産相続持分を 配偶者100%とする
配偶者 175万円 × 1 = 175万円
例3)実際の遺産相続持分を 配偶者 なし 子供 3等分とする
配偶者 175万円 × 0 = 0円
子供 175万円 × 3分の1 = 58万3,300円
ここから、第4段階の各種税額控除(配偶者控除など)を反映させると税額を算出することが可能です。
知っておきたい配偶者控除
第4段階の各種税額控除の一つとして配偶者控除があります。
配偶者控除とは
これは、課税価格の合計額(7,200万円)のうち配偶者に係る法定相続分相当額(3,600万円)までである場合、又は、1億6,000万円以下である場合には、配偶者控除により納付すべき相続税額が非課税となります。
つまりは、1億6,000万円×40%-1,700万円=4,700万円(相続税額)までは配偶者は相続税が非課税となるのです。
よって、上記例の場合、例1、例3については子供のみ納税、例2については誰も納税する必要はないということになります。
配偶者控除を受けるために必要な手続き
配偶者控除の適用を受けるためには申告を行う必要があります。配偶者控除の場合はたとえ課税財産がなかったとしても申告しなければなりません。
配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けるためには、原則として申告期限までに遺産分割などにより配偶者が実際に取得したものに限って適用されます。なお、申告期限までに遺産分割が行われなかった場合であっても、「申告期限後3年以内に遺産分割が行われた場合」「申告期限後3年以内に遺産分割ができないことについて特別の事情がある場合」において、税務署長の承認を受け、一定の期間内に遺産分割が行われたときはその適用が受けられる特例があります。
まとめ
いかがだったでしょうか?世の中のほとんどの相続人が相続税は支払う必要がない理由がなんとなくわかっていただければ嬉しく思います。
簡単にまとめると基礎控除や配偶者控除などの適用を受けることでほとんどの相続人は非課税となるわけです。
ほかにも税額控除にはさまざま種類があります。また随時ご紹介したいと思います。
また、配偶者控除には見落としがちな落とし穴も潜んでおります。そのことについては下の記事でご紹介してますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
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