行政書士試験の受験を目指す方にとって、法改正の情報は避けて通れないポイントです。2026年1月1日、「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)が施行されました。日本行政書士会連合会の会長談話でも紹介されているとおり、行政書士制度にとって大きな節目となる改正です。この記事では、改正の主なポイントと、行政書士試験や実務への影響について、初めて学ぶ方にもわかりやすく解説します。
なお、法改正の詳細な条文解釈や、試験問題への具体的な反映のされ方については、今後公表される試験実施団体の情報や、実務上の運用によって明らかになっていく部分もあります。本記事は執筆時点(2026年8月)で判明している情報にもとづく概要ですので、最新情報は日本行政書士会連合会など公式情報でご確認ください。
改正行政書士法とは
「行政書士法の一部を改正する法律」は、第217回通常国会において、衆議院総務委員長からの提出(議員立法)という形で審議され、可決・成立し、2025年6月13日に法律第65号として公布されました。行政書士法は昭和26年(1951年)に制定された法律で、2026年はちょうど公布75周年という節目の年にあたります。この記念すべき年に、行政書士制度を大きく前進させる改正が施行された形です。
日本行政書士会連合会の会長談話によると、この改正法は国会審議において全会一致で可決されており、幅広い合意のもとで成立した法律であるとされています。
改正の主なポイント
日本行政書士会連合会が公表している情報をもとに、改正の主なポイントを整理すると、大きく次の4点にまとめられます。
1. 行政書士の使命・職責の明確化とデジタル社会への対応
改正により、行政書士法の目的規定が見直され、行政書士の「使命」が法律上明確化されました。あわせて、行政書士が担う「職責」についても、初めて条文上に明記されています。さらに、情報通信技術(デジタル技術)の活用などを通じて、国民の利便性向上や業務の改善・進歩を図るよう努める義務も新たに規定されました。士業に関する法律の中で、デジタル社会への対応が努力義務として明記されたのは、これが初めての事例とされています。
2. 特定行政書士の業務範囲の拡大
行政書士のうち、一定の研修を修了して認定を受けた「特定行政書士」は、行政庁に提出した書類について不服申立て(行政不服審査法にもとづく審査請求など)の代理を行うことができます。改正前は、行政書士自身が作成した書類に関する不服申立てに限られていましたが、改正後は、行政書士が「作成することができる」書類に関する許認可等についても対象が広がる方向で見直されています。これにより、特定行政書士が代理できる業務の範囲が拡大されることになります。
3. 業務制限規定における「報酬」の明確化
行政書士法では、無資格者が報酬を得て行政書士の独占業務を行うことを禁止していますが、改正により、業務の制限規定に「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されました。これにより、「会費」や「コンサルタント料」など、名目がどのようなものであっても、実質的に報酬にあたる場合は規制の対象になることが、より明確に条文上示された形です。近年、無資格者による補助金申請代行などのトラブルが問題視されてきたことも、この見直しの背景にあるとみられます。
4. 両罰規定の整備
業務制限規定に違反した場合、これまでは違反した個人(行為者)が罰則の対象とされてきましたが、改正により「両罰規定」が整備され、行為者本人だけでなく、その者が所属する法人に対しても罰則が科されることとなりました。組織的な違反行為に対する抑止力を高める狙いがあるといえます。
行政書士試験への影響
行政書士試験は、憲法・民法・行政法・商法といった法令科目に加えて、一般知識等の科目から出題されます。日本行政書士会連合会をはじめとする関係団体の情報によれば、2025年に実施された試験は改正前の法律にもとづいて行われましたが、2026年度の試験からは、デジタル社会への対応に関する努力義務や、業務制限規定の見直しなど、改正後の条文内容が出題範囲に反映される可能性があるとされています。
すでに受験対策を進めている方は、使用しているテキストや問題集が、改正後の条文に対応した最新版であるかどうかを確認しておくことをおすすめします。特に「行政書士法」そのものを扱う科目・分野では、改正前後で条文の文言が変わっている箇所があるため、古い情報のまま学習を進めてしまうと、思わぬ失点につながる可能性があります。
実務者・開業を目指す方への影響
すでに行政書士として活動している方や、これから開業を目指す方にとっても、今回の改正は実務上の影響があります。特に、特定行政書士の業務範囲が拡大されることで、認定を受けている方は、これまで対応できなかった案件について不服申立ての代理を行えるようになる可能性があります。特定行政書士の資格を持つ方は、拡大される業務範囲の具体的な内容について、日本行政書士会連合会や所属する都道府県行政書士会からの案内を確認しておくとよいでしょう。
また、両罰規定の整備により、法人として行政書士業務に関わる場合のコンプライアンス体制の重要性も、これまで以上に高まっているといえます。
改正の背景にある社会の変化
今回の改正の背景には、行政手続きのデジタル化が急速に進む中で、行政書士に対しても専門職として時代に即した対応が求められるようになったことがあります。また近年、資格を持たない事業者が「コンサルタント」などの名目で補助金申請の代行を有償で行い、トラブルに発展するケースが社会的な問題として取り上げられる場面も増えていました。今回、業務制限規定における「報酬」の定義が明確化され、両罰規定が整備されたのは、こうした無資格者による業務の適正化を図る狙いがあるとみられます。
日本行政書士会連合会の会長談話では、今回の改正法案が国会において全会一致で可決された点についても言及されており、行政書士制度の見直しが幅広い立場からの支持を得て進められたことがうかがえます。
行政書士試験の学習で意識しておきたいこと
行政書士試験の受験生の中には、法令科目の学習に重点を置くあまり、行政書士法そのものの学習を後回しにしてしまう方も少なくありません。しかし、行政書士法は行政書士としての土台となる法律であり、今回のような改正が行われた年は、例年以上に出題の可能性を意識しておく必要があります。改正前後で内容が変わった条文については、単に「新しい条文を覚える」だけでなく、「なぜその改正が行われたのか」という背景まで理解しておくと、応用的な出題にも対応しやすくなります。
学習を進める際は、以下のような点を意識するとよいでしょう。
- 使用する教材の発行時期を確認し、改正後の条文に対応しているか確かめる
- 行政書士法の目的規定や職責規定など、改正で追加・修正された箇所を重点的に確認する
- 特定行政書士の業務範囲の拡大など、実務的なニュースにもアンテナを張っておく
まとめ
2026年1月1日に施行された改正行政書士法は、行政書士の使命・職責の明確化とデジタル社会への対応義務の新設、特定行政書士の業務範囲の拡大、業務制限規定における「報酬」の明確化、両罰規定の整備という4つの大きな柱からなる改正です。行政書士法制定75周年という節目の年に行われた、制度の発展にとって重要な改正といえます。
行政書士試験の受験生は、最新の教材で改正後の条文内容を確認しながら学習を進めることが大切です。また、すでに実務に携わっている方も、業務範囲の拡大やコンプライアンス体制の見直しなど、実務面での影響を踏まえた対応が求められます。制度の詳細な運用については、今後も日本行政書士会連合会などの公式情報を継続的に確認していくことをおすすめします。

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