ここでは、会社で毎日必ずといっていいくらい行う商品を買った時、売った時の経理の仕訳処理の方法について日商簿記3級出題範囲をもとにご紹介したいと思います。
商品売買に関係する用語の意味
商品売買を学習する上で知っておかなければならない用語をまとめておきます。
用語 | 意味 |
仕入れ | 販売用の商品などを購入してくること。 |
原価(仕入原価) | 商品を仕入れたときの金額をいう。 |
売上げ | 商品を顧客に販売すること。 |
売価 | 商品を販売した時の金額をいう。 |
仕入先 | 商品を仕入れた相手先のことをいう。 |
得意先 | 商品を売上げた相手先のことをいう。 |
三分法と分記法
商品を仕入れたり、売上たりしたときの処理の方法は2種類あります。それは「三分法」と「分記法」です。私の働いている会社では、「三分法」で処理しており、おそらくほとんどの会社では「三分法」ではないかと思います。今後の記事は「三分法」を中心に説明していきます。
三分法とは
三分法とは、商品の売買取引について、「仕入(費用)」、「売上(収益)」、「繰越商品(資産)」の3つの勘定科目で処理する方法をいいます。
例)甲社は乙社から商品を100円で仕入れ、代金を現金で支払った。
仕入 100 / 現金 100
例)甲社は丙社に商品(原価100円)を120円で売上げ、代金は現金で受け取った。
現金 120 / 売上 120
基本的な「仕入」「売上」の処理は上記の通りです。「繰越商品」の処理については、決算整理事項の内容となりますので別記事でご紹介したいと思います。簡単に説明しますと、期末に残っている商品の原価を翌期に繰り越すために使われるのが「繰越商品」です。
分記法とは
分記法とは、商品の売買取引について、「商品(資産)」、「商品販売益(収益)」の2つの勘定科目で処理する方法をいいます。
例)甲社は乙社から商品を100円で仕入れ、代金を現金で支払った。
商品 100 / 現金 100
例)甲社は丙社に商品(原価100円)を120円で売上げ、代金は現金で受け取った。
現金 120 / 商品 100
ああああああああああああ/ 商品販売益 20
仕入れと売上げ時の掛け取引
掛け取引とは
掛け取引とは、商品の売買の代金をその時に支払ったり、受け取ったりせずに、後日に支払ったり、受け取ったりすること約束し取引を行うことをいいます。
このような取引を信用取引といいます。信用があるからこそ、掛け取引が成立します。
また、毎日取引を行っていたとした場合、その都度精算をすると非常に手間がかかります。そのため、1月に1回まとめて一定の日に行うという方法としても掛け取引は採用されます。
商品を掛け取引で仕入れた時
商品を掛け取引で仕入れた時は、代金を後で支払う義務が生じます。これを仕訳では「買掛金(負債)」で処理します。
例)甲社は乙社より商品100円を仕入れ、代金は掛けとした。
仕入 100 / 買掛金 100
例)甲社は乙社に対する買掛金100円を現金で支払った。
買掛金 100 / 現金 100
商品を掛け取引で売上げた時
商品を掛け取引で売上た時は、代金を後で受け取る権利が生じます。これを仕訳では、「売掛金(資産)」で処理します。
例)甲社は乙社に商品100円を売上げ、代金は掛けとした。
売掛金 100 / 売上 100
例)甲社は乙社に対する売掛金100円を現金で受け取った。
現金 100 / 売掛金 100
商品の返品
日々商売をしていると商品の品違いや不良品等を理由に、商品を仕入先に返したり、得意先から帰ってきたりすることがあります。これを「返品」といいます。
この「返品」が行われた場合の仕訳のイメージは、当初行った取引の「逆仕訳」です。
「返品」がされたときに仕訳処理についてみていきましょう。
仕入れた商品を仕入先に返品した場合
仕入先に返品したときは、いったん計上した仕訳の「仕入(費用)」を取り消すことになります。なお、相手科目は通常「買掛金(負債)」と相殺することになります。
例)甲社から掛け取引で仕入れた商品のうち、50円が不良品であったため返品した。
買掛金 50 / 仕入 50
売上た商品が得意先から返品された場合
得意先に返品したときは、いったん計上した仕訳の「売上(収益)」を取り消すことになります。なお、相手科目は通常「売掛金(資産)」と相殺することになります。
例)乙社に掛け取引で売上た商品のうち、50円が不良品であったため返品を受けた。
売上 50 / 売掛金 50
商品売買における「諸掛り」
諸掛りとは
諸掛り(しょがかり)とは、商品の販売時に発生する運賃などの付随費用をいいます。
また諸掛りは、商品を仕入れたときに要する諸掛りを「仕入諸掛り」といい、商品を売り上げたときに要する諸掛りを「売上諸掛り」といいます。
これらは、仕入側、販売側のどちらで負担するかによって仕訳が異なります。一つ一つ見ていきましょう。
自社負担の諸掛りを支払った場合
商品の仕入れ時
商品の仕入れの際に、自社負担分の諸掛りを支払った場合には、その分を「仕入(費用)」に加算して処理します。
例)甲社は乙社から商品100円を仕入れ、運賃10円(当社負担)とともに現金で支払った。
仕入 110 / 現金 110
商品の売上げ時
商品を売上た際に、自社負担分の諸掛りを支払った場合には、その分を「発送費(費用)」で処理します。
例)甲社は乙社に商品100円で売り上げ、代金は掛けとした。なお、運賃10円(当社負担)は現金で支払った。
売掛金 100 / 売上 100
あああああ発送費 10 / 現金 10
相手負担の諸掛りを支払った場合
相手が負担すべき諸掛りを支払った場合、後にその分代金を回収することとなります。よって、「立替金(資産)」として処理することになります。これは、商品を仕入れた場合、売上た場合ともに同じです。
例)甲社は乙社から商品100円を仕入れ、運賃10円(相手負担)とともに現金で支払った。
仕入 100 / 現金 110
あああああ立替金 10 /
例)甲社は乙社に商品100円で売り上げ、代金は掛けとした。なお、運賃10円(相手負担)は現金で支払った。
売掛金 100 / 売上 100
あああああ立替金 10 / 現金 10
諸掛りの処理まとめ
諸掛りは立場やどちらが負担するかによって処理が変わりゴチャゴチャになりがちです。
下図は諸掛りの処理をまとめた表になっておりますので参考にして下さい。
仕入諸掛り | 当社負担 | 仕入に含める。 |
相手負担 | 立替金で処理する。 | |
売上諸掛り | 当社負担 | 発送費で処理する。 |
相手負担 | 立替金で処理する。 |
【新規論点】クレジット等により決済された売上げ
普段私たちがコンビニ等で買い物をするときに「現金」で支払うほかに、「クレジットカード」で支払うことがあります。この時の、コンビニ等のお店は後日「信販会社」から代金を受け取る権利が発生します。この権利を「クレジット売掛金(資産)」といいます。
「売掛金」と「クレジット売掛金」に違いは??
クレジットカードによる売上げの場合、通常の売上げの代金を受け取る権利である「売掛金」とは別に「クレジット売掛金」を使います。これは、代金を受け取る権利の先が「買い物をした人」ではなく、「信販会社」になり債権をわかりやすく区別するためです。
クレジット売掛金の処理
商品を売り上げ、代金の支払いをクレジットカードにより行われた場合は、「クレジット売掛金(資産)」で処理します。また、この場合、信販会社に決済手数料を支払うことになります。この決済手数料は「支払手数料(費用)」として処理します。
例)商品100円をクレジットカード払いで売り上げた。なお、信販会社への手数料は2%であり販売時に計上する方法をとっている。
クレジット売掛金 98 / 売上 100
あああ支払手数料 2 /
「支払手数料」の計上するタイミングは、「商品を売り上げたとき」「決済時」の2種類あり、会社によってそれぞれいずれかを採用することになります。今回の例は、「商品を売り上げたとき」に計上する方法で紹介しています。
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