税理士試験は、他の多くの資格試験とは異なり、一度に5科目すべてに合格する必要がない「科目合格制度」を採用していることが大きな特徴です。この制度のおかげで、働きながら数年かけて合格を目指すことができる一方、「どの科目から受験すればよいのか」「会計科目と税法科目、どちらを優先すべきか」と悩む受験生も少なくありません。本記事では、税理士試験の受験資格や科目合格制度の仕組み、そして受験科目を選ぶ際に押さえておきたいポイントについて解説します。
税理士試験の受験資格と科目合格制度
会計科目は誰でも受験可能に(令和5年度試験からの変更)
税理士試験は、以前は受験にあたって一定の学識要件や資格要件などの受験資格を満たす必要がありましたが、令和5年度(2023年度)の試験から、簿記論・財務諸表論の会計科目2科目については、受験資格の制限が撤廃され、年齢や学歴にかかわらず誰でも受験できるようになりました。一方、税法科目については、引き続き大学における法律学・経済学に関する科目の履修や、日商簿記検定1級の取得など、いずれかの受験資格を満たす必要があります。これから税理士を目指す方は、まず受験資格の制限がない会計科目から着手し、税法科目の受験資格を満たすタイミングで税法科目に進むという流れを取ることもできます。
5科目に合格すれば「官報合格」となる仕組み
税理士試験に合格するためには、会計科目2科目(簿記論・財務諸表論)と、税法に属する科目のうち法人税法・所得税法のいずれか1科目以上を含む税法3科目を合わせた、計5科目に合格する必要があります。この5科目すべての合格に達すると、いわゆる「官報合格」となり、実務経験等の要件を満たした上で税理士登録を行うことができます。
一度合格した科目は生涯有効
税理士試験の大きな特徴は、1回の試験で5科目すべてに合格する必要がなく、1科目ずつ受験して合格を積み重ねていくことができる点です。しかも、一度合格した科目については、その後何年経っても合格の効力が失われることはありません。このため、社会人として働きながら、毎年1〜2科目ずつ受験するというスタイルで、数年かけて官報合格を目指す受験生が多く見られます。
各科目の合格基準の考え方
税理士試験の各科目は100点満点で採点され、合格基準はおおむね満点の60%程度を目安に定められるとされています。ただし、実際の合格ラインは、その年の受験者全体の得点状況などを踏まえて総合的に判断される場合があり、必ずしも60点を得点すれば確実に合格できるとは限りません。詳細な合格基準の考え方や年度ごとの結果については、国税庁が公表する情報を確認するようにしましょう。
会計科目・税法科目の特徴
必須科目である簿記論・財務諸表論
簿記論と財務諸表論は、税理士試験に合格するために必ず合格しなければならない必須科目です。簿記論は、企業の取引を記録・集計する簿記の技術的な側面を、財務諸表論は、簿記の背景にある会計理論や財務諸表の作成ルールを、それぞれ問う科目とされています。両科目は学習内容に重なる部分も多いため、同時並行で学習を進める受験生も少なくありません。
選択が必要な税法科目
税法科目には、法人税法、所得税法、相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税があり、このうち法人税法・所得税法のいずれか1科目以上を含む3科目を選択して受験します。それぞれの科目にはボリュームや実務での活用度に違いがあるとされており、たとえば法人税法・所得税法は出題範囲が広く学習量が多い一方、実務に直結しやすい科目とされます。消費税法や国税徴収法は、比較的学習範囲がまとまっているとされ、初めて税法科目に挑戦する方が選ぶこともあるようです。ただし、体感的な難易度や必要な学習時間は年度や個人の得意分野によっても変わるため、あくまで一般的な傾向として捉えておくとよいでしょう。
受験科目を選ぶ際のポイント
将来の実務との関連性を考える
税理士として将来携わりたい業務のイメージがある場合は、それに関連する税法科目を選ぶという考え方があります。たとえば、法人の税務顧問業務に携わりたい場合は法人税法、資産税分野に興味がある場合は相続税法といったように、自分のキャリアの方向性と結びつけて科目を選ぶことで、学習内容が実務にも直結しやすくなります。
学習ボリュームと受験可能な年数を踏まえて計画する
科目ごとに必要とされる学習時間の目安は異なるとされています。仕事や家庭の事情で学習時間を確保しにくい方は、比較的学習範囲がまとまっているとされる科目から着手し、学習に多くの時間を割ける時期にボリュームの大きい科目に取り組むなど、自分の生活スタイルに合わせた受験計画を立てることが、無理なく合格を積み重ねていくコツといえます。
官報合格後に必要な実務経験も視野に入れる
5科目に官報合格した後、実際に税理士として登録するためには、通算2年以上の実務経験が必要とされています。会計事務所や税理士法人などで働きながら受験を続けている場合は、この実務経験を試験勉強と並行して積み上げていくことができますが、そうでない場合は、官報合格後に改めて実務経験を積む必要が生じることもあります。科目選びの段階から、自分が置かれている環境や将来の実務経験の積み方についても、あわせて考えておくとよいでしょう。
官報合格以外のルートも知っておこう
大学院での科目免除制度
税理士試験には、科目合格制度とは別に、大学院で会計学または税法に関する研究を行い、一定の要件を満たす修士の学位を取得することで、税法科目または会計科目の一部について試験が免除される制度があります。この制度を利用する場合、大学院での研究・論文作成に一定の時間と費用がかかる一方で、免除された科目については個別の試験対策が不要になるというメリットがあります。働きながら受験を続けるか、大学院での免除制度を活用するかは、それぞれの生活状況やキャリアプランに応じて検討するとよいでしょう。
公認会計士・弁護士など他資格による道
税理士になるための道は、税理士試験に合格する方法だけではありません。公認会計士や弁護士の資格を持つ方は、税理士試験を受験することなく、税理士として登録できる制度が設けられています。これらの資格はいずれも取得難易度が高く、税理士だけを目指す場合に必ずしも近道になるとは限りませんが、会計や法律の他分野にも関心がある方にとっては、選択肢の一つとして知っておく価値があるといえます。
まとめ
税理士試験の科目合格制度は、5科目を一度に合格する必要がなく、働きながらでも着実にステップアップしていける仕組みです。令和5年度試験からは会計科目の受験資格も撤廃され、以前よりも挑戦しやすい試験になっています。必須科目である簿記論・財務諸表論に加え、税法科目は自分の将来のキャリアや学習可能な時間、実務経験の積み方を踏まえて選ぶことが、無理のない合格への近道になります。受験科目の詳しい内容や最新の試験情報については、国税庁が公表する税理士試験の公式情報を必ず確認するようにしましょう。

コメント