行政書士資格を取得したものの、「このままの業務範囲で安定した収入を得られるだろうか」と将来に不安を感じる方は少なくありません。行政書士は取り扱える業務の範囲が幅広い一方、単独の資格だけでは対応できない手続きも多く、他の資格と組み合わせる「ダブルライセンス」によって業務の幅を広げ、収入アップや差別化につなげている方が数多くいます。この記事では、行政書士とあわせて取得することでメリットが期待できる資格の組み合わせと、選び方のポイントを解説します。
資格取得後の年収や案件の獲得状況は、個人の営業力や専門分野、地域の状況によって大きく異なります。本記事で紹介する内容は一般的な傾向であり、実際の収入を保証するものではない点にご留意ください。
なぜ行政書士にダブルライセンスが重要なのか
行政書士単独では対応できない業務がある
行政書士は、官公署に提出する書類の作成や、権利義務・事実証明に関する書類の作成などを幅広く手がけられる資格ですが、不動産の登記手続きは司法書士、労働・社会保険の手続きは社会保険労務士、税務申告は税理士など、隣接する分野には、それぞれ別の資格でなければ対応できない業務が存在します。顧客から関連する相談を受けた際に、自分では対応できず他の専門家を紹介するだけで終わってしまうと、案件を丸ごと他の事務所に持っていかれてしまうこともあります。
ワンストップ対応が差別化につながる
相続や会社設立、外国人雇用など、複数の手続きが絡む案件では、一つの窓口で関連する手続きをまとめて依頼できる事務所へのニーズが高まっています。ダブルライセンスを持つことで、顧客の相談に対してより幅広く対応できるようになり、他の事務所との差別化や、紹介による案件獲得にもつながりやすくなります。
行政書士とのダブルライセンスでよく選ばれる資格
社会保険労務士(社労士)との組み合わせ
社会保険労務士は、労働・社会保険に関する書類作成や、企業の人事労務に関する相談・指導を行う国家資格です。会社設立に関する許認可を行政書士が担当し、設立後の労務管理や社会保険手続きを社労士として引き受けるなど、企業のライフサイクルに沿ったサポートを一つの事務所で提供できる点が強みです。中小企業の経営者からの継続的な顧問契約につながりやすい組み合わせといえます。
宅地建物取引士(宅建士)との組み合わせ
相続、農地転用、民泊、建設業許可など、行政書士の業務には不動産が関わる相談が多くあります。宅建士の知識を持つことで、不動産取引の重要事項説明などの制度側の理解が深まり、不動産会社や金融機関との連携もとりやすくなります。相続関連の業務を専門分野とする行政書士にとって、特に親和性の高い組み合わせです。
より専門性を高めたい人向けの組み合わせ
税理士との組み合わせ
相続関連の業務では、遺産分割協議書の作成といった行政書士としての業務に加えて、相続税の申告が必要になるケースが多くあります。税理士資格をあわせ持つことで、相続税の計算や申告まで一貫して対応できるようになり、顧客にとってより安心感のあるサービスを提供できます。ただし、税理士試験は科目合格制で学習の負担も大きいため、他の組み合わせに比べて取得までの時間がかかる点は理解しておく必要があります。
司法書士との組み合わせ
司法書士は不動産登記や商業登記、簡易裁判所での訴訟代理など、行政書士とは異なる独占業務を持つ資格です。行政書士としての経験を積んでから司法書士を目指すことで、会社設立に関する定款作成から登記まで一貫したサポートが可能になります。ただし、司法書士試験は難関資格として知られており、共通する科目があるとはいえ、相応の学習期間を見込んでおく必要があります。
ダブルライセンスを検討するときの注意点
業務量とのバランスを考える
複数の資格を維持するには、それぞれの継続教育や会費、実務対応の時間が必要になります。取得すること自体が目的化してしまうと、かえって本業である行政書士業務に手が回らなくなることもあるため、自分がどのような分野で顧客に価値を提供したいのかを明確にしたうえで、必要な資格を選ぶことが大切です。
実務能力と集客の両方が欠かせない
ダブルライセンスを持っていても、実務対応の質が伴わなければ顧客からの信頼にはつながりません。また、どれだけ専門知識があっても、集客に取り組まなければ安定的に案件を獲得することは難しいのが実情です。資格の組み合わせは、あくまで提供できるサービスの幅を広げる手段の一つと捉え、実務経験や情報発信、営業活動とあわせて取り組んでいくことが重要です。
ダブルライセンス取得までの進め方
まずは行政書士としての実務経験を積む
多くの先輩行政書士は、開業後すぐに次の資格取得を目指すのではなく、まずは行政書士としての実務経験を積みながら、顧客からどのような相談が多いのか、自分がどの分野に関心を持てるのかを見極めてから、次に取得する資格を検討しています。実務を通じて需要の高い分野が見えてくることで、資格取得後の活かし方もより具体的にイメージしやすくなります。
共通する科目を活かして学習負担を抑える
資格によっては、行政書士試験で学習した民法や商法などの知識が土台として活かせる場合があります。次に目指す資格の出題科目を事前に確認し、共通する部分と新たに学習が必要な部分を整理しておくことで、限られた時間の中でも効率的に学習を進めやすくなります。仕事と学習を両立させる場合は、無理のないスケジュールを組むことも大切です。
地域や専門分野によって相性は変わる
都市部と地方では求められる業務が異なる
都市部では外国人の在留資格や会社設立に関する相談が多い一方、地方では農地転用や相続、地域の建設業許可に関する相談が中心になるなど、事務所を構える地域によって需要の高い業務は異なります。ダブルライセンスの組み合わせを検討する際は、全国的な傾向だけでなく、自分が活動する地域でどのような相談が多いのかも踏まえて判断することが大切です。
専門分野を一つに絞ることも一つの戦略
ダブルライセンスによって業務の幅を広げる方法がある一方で、あえて資格を増やさず、一つの専門分野を深く掘り下げることで高単価の案件を獲得している行政書士も存在します。どちらの方向性が自分に合っているかは、これまでの経験やキャリアの目標によって異なるため、資格を取得すること自体を目的にせず、自分の事務所経営の方針とあわせて検討するとよいでしょう。
よくある質問
ダブルライセンスがあれば必ず年収が上がりますか
資格を組み合わせること自体が収入アップを保証するものではありません。実際の年収は、専門分野の選び方や営業力、地域の需要などによって大きく異なります。行政書士の年間売上高の実態調査でも、500万円未満の事務所が多数を占めており、資格の数よりも、案件の獲得力や専門性の確立が収入に直結する傾向があるといえます。
どの資格から取得するのがよいですか
一般的には、行政書士試験に合格したうえで、実務を通じて自分がどの分野に強みや関心を持てるかを見極めてから、次の資格を検討する進め方がすすめられています。共通する出題科目がある資格の組み合わせでは、学習の負担を抑えられる場合もあるため、気になる資格の出題範囲を事前に調べてみるとよいでしょう。
会社員をしながらダブルライセンスを目指せますか
会社員として働きながら行政書士登録をせずに次の資格の学習を進め、複数の資格をまとめて取得してから独立を目指す方もいます。ただし、資格によっては登録に実務経験が必要な場合もあるため、どのタイミングで登録・独立するかは、それぞれの資格の登録要件を確認したうえで計画を立てることをおすすめします。
まとめ
行政書士とのダブルライセンスは、業務の幅を広げ、顧客に対してワンストップのサービスを提供するための有効な選択肢の一つです。社労士や宅建士、税理士、司法書士など、それぞれの資格には異なる強みがあり、自分が目指す専門分野によって適した組み合わせは変わってきます。資格の取得はあくまで手段であり、実務経験の蓄積や集客活動とあわせて取り組むことで、初めて収入アップにつながることを念頭に置きながら、キャリアプランを検討していきましょう。

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