勤怠管理システムに蓄積された打刻データや休暇取得データを生成AIに読み込ませることで、残業時間の偏りや有給休暇の取得率が低い部署・時期といった傾向を、短時間で把握できるようになってきている。ただし、生成AIが示すのはあくまで「データから読み取れる傾向」であり、労働時間の適正な把握や是正措置の判断は、労務担当者が労働基準法等の規定に照らして行う必要がある。
勤怠管理データ分析で生成AIができること
勤怠管理システムから出力したCSVデータなどを生成AIに渡すと、月別・部署別の残業時間の集計や、突出して残業が多い従業員・部署の抽出、有給休暇の取得率が低い従業員のリストアップといった作業を、人がExcelで一つずつ集計するよりも短時間でこなせる場合がある。表計算だけでなく、傾向を文章で要約させたり、経営会議向けの説明文の下書きを作らせたりする使い方も紹介されている。
残業時間の傾向把握
生成AIに部署別・月別の残業時間データを読み込ませると、繁忙期の傾向や、特定の部署に残業が偏っている状況を数値とあわせて説明させることができる。ここで生成AIが出す数値はあくまで入力データの集計結果であり、元データの打刻に誤りがあれば、そのまま誤った結果になる点には注意したい。
有給取得状況の傾向把握
有給休暇の取得日数・取得率についても、部署別・年次別に集計させ、取得が進んでいない従業員を早期に把握する用途で使われている。年次有給休暇の年5日取得義務など、労働基準法上の要件を満たしているかどうかの最終確認は、生成AIの集計結果を踏まえたうえで労務担当者が行うべき作業であり、AIの回答をそのまま届出や指導の根拠に使うことは避けたい。
活用の流れ
勤怠管理データを生成AIで分析する際は、次のような流れで進めると、目的に沿った分析結果を得やすい。
| ステップ | 内容 |
| 1. データの準備 | 勤怠管理システムから個人名を伏せた状態でCSV等を出力する |
| 2. 分析目的の設定 | 「残業時間の偏りを知りたい」等、確認したい観点を明確にして指示する |
| 3. 生成AIへの読み込み | 集計・傾向分析・要約作成を指示する |
| 4. 結果の検証 | 集計結果を実データやシステムのレポート機能と突き合わせて確認する |
| 5. 対応の検討 | 是正が必要な部署・従業員への対応を労務担当者が判断する |
活用イメージ:中堅企業の人事部門での例
たとえば従業員数が数百名規模の企業の人事部門では、月次の勤怠データを生成AIに読み込ませ、残業時間が特に多い部署のランキングや、有給休暇の取得率が平均を下回る従業員のリストを自動的に作成させるといった使い方が考えられる。作成した一覧をもとに、労務担当者が該当部署の管理職へのヒアリングを行ったり、有給取得を促す声かけを行ったりするなど、次のアクションにつなげる材料として活用できる。生成AIが作成する一覧はあくまで気づきを得るための材料であり、そこから先の対応方針の決定は人が行う点は変わらない。
活用する際の注意点
勤怠データには従業員個人の労働時間や休暇取得状況といった機微な情報が含まれるため、外部の生成AIサービスに入力する際は、個人名を伏せる、社内向けに閉じた環境を使うなど、情報管理の方法を事前に確認しておく必要がある。また、生成AIによる集計結果を過信し、打刻漏れや端数処理の誤りなど元データ側の問題を見落とさないよう、最終的な数値はシステムのレポート機能等でも確認することが望ましい。
あわせて、給与計算業務における生成AI活用の実態については給与計算ソフトに搭載された生成AI機能、どこまで自動化できるかでも解説しているので参考にしてほしい。
よくある質問
Q. 勤怠管理データの分析に生成AIを使う際、個人情報保護の観点で気をつけることは何か。
従業員個人が特定できる氏名や社員番号を含んだまま外部の生成AIサービスに入力すると、情報漏洩のリスクが生じる。分析に個人名までは必要ない場合は、部署名や仮のIDに置き換えるなど、個人が特定されない形に加工してから読み込ませる運用が望ましい。
Q. 生成AIが示した残業時間の集計結果は、そのまま労働時間管理の記録として使ってよいか。
生成AIの集計結果はあくまで入力データをもとにした要約であり、打刻漏れや休憩時間の反映誤りなど元データの不備があれば、そのまま誤った結果になる。労働時間の適正な把握が求められる場面では、勤怠管理システム本体の記録を正とし、生成AIの分析結果は傾向をつかむための参考情報として扱うべきである。
Q. 有給休暇の取得率が低い従業員を生成AIに抽出させることに問題はないか。
取得率の低い従業員を早期に把握し、取得を促す目的での活用は有効だが、抽出結果をもとに特定の従業員へ一方的な指導を行うと、事情への配慮を欠いた対応になりかねない。抽出結果はあくまできっかけとして扱い、本人の状況を確認したうえで対応を検討する姿勢が求められる。
Q. 勤怠データの分析結果を、生成AIにそのまま経営会議の資料としてまとめさせてよいか。
傾向を整理した文章の下書きとして活用することは可能だが、経営会議で使う資料は数値の正確性が重視されるため、生成AIが作成した文章に誤った数値や誇張した表現が含まれていないか、労務担当者が必ず確認したうえで資料化する必要がある。
まとめ
勤怠管理データの分析に生成AIを活用すれば、残業時間や有給取得状況の傾向を効率よく把握できる一方、集計結果の正確性の担保や個人情報の取り扱いには注意が必要になる。生成AIはあくまで傾向把握を助けるツールとして位置づけ、労働時間管理や是正措置の判断は労務担当者が責任を持って行う体制を維持したい。

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