2026年時点の動向を整理すると、会計・経理分野ではAIエージェントによる自律的な処理が本格化しつつあり、労務・人事分野では法的リスクへの注意喚起が広がり、司法書士や弁理士、宅地建物取引士といった各士業の業務でも周辺業務から専門業務へと活用範囲が徐々に広がっている。一方で、生成AIの誤情報や情報漏洩などのトラブル事例も報告されており、ガイドライン整備とリスク管理の重要性は増している。
会計・経理分野の動向―AIエージェントによる自律処理へ
Microsoft 365 Copilotは会計事務所・監査法人での導入事例が複数報告されており、議事録作成やメール下書き、Excelデータ整理といった補助的業務での活用が中心となっている。またfreeeはAI-OCRによる請求書・領収書の自動読み取りや自動仕訳提案などの機能を拡充しており、マネーフォワードは2026年7月から自律的にバックオフィス業務を処理する「AI Cowork」の提供を予定していると発表している。あいまいな指示でも経理業務をまとめて処理するエージェント機能が紹介されるなど、経理分野では自動化の範囲が着実に広がっている。
監査分野での試験的な活用
公認会計士監査の分野では、大手監査法人が生成AIを試験的に業務プロセスへ組み込みつつあるとされるが、監査意見の形成など最終判断は公認会計士が担う点は変わらないとされる。日本公認会計士協会も特設ページでAIと会計士業務の関係を整理しており、業界団体としての情報発信も進んでいる。
労務・人事分野の動向―法的リスクへの注意喚起
人事評価コメントやハラスメント相談記録の整理に生成AIを使う場合、事実に基づかない評価や画一的な表現による不公平感、個人情報の取扱いといった法的リスクが社労士等の専門家から指摘されている。また、人事労務分野での生成AI活用について、個人情報保護、差別的取扱い、説明責任などの観点から法的リスクを整理する記事も複数公開されている。「AIを使いこなせ」という業務指示が行き過ぎるとハラスメントに該当し得るという指摘もあり、業務指導との境界線が論点になっている。
士業ごとの活用範囲の広がり
司法書士・弁理士
司法書士事務所では議事録作成や解決事例作成など周辺業務での活用事例が報告される一方、登記申請書類そのものの作成には専門知識に基づく最終確認が不可欠とされる。弁理士の特許明細書作成についても、新規性や権利範囲の記載精度、秘密情報の外部送信リスクなど、複数の注意点が専門家から指摘されている。
宅地建物取引士
宅地建物取引士の重要事項説明については、国土交通省が「重要事項説明に関する業務におけるデジタル・AI等の技術を用いた補助ツールの取扱いについて」を公表し、IT重説の延長線上でデジタル・AI技術の補助的活用の考え方を整理している。制度面でのガイドライン整備が進んでいる分野の一例といえる。
行政書士・中小企業診断士
行政書士業務では、許認可申請書類の下書き作成や、デジタル化・AI導入補助金の申請サポートにおいて生成AIの活用が紹介されている。中小企業診断士の実務でも、経営診断や事業計画書作成の補助として生成AIツールを使う動きが紹介されており、士業全体で周辺業務から専門業務にかけて活用の裾野が広がりつつある。
生成AIのトラブル事例とガイドライン整備の必要性
生成AIの業務利用に伴うトラブル事例として、誤情報の提供、著作権侵害、情報漏洩などをまとめた記事が複数公開されており、事前のガイドライン整備やチェック体制の重要性が繰り返し指摘されている。士業事務所においても、業務に生成AIを利用する際に顧客への説明や同意取得をどう行うかという論点が浮上しており、事務所ごとの利用方針を明文化する動きが今後広がると考えられる。
2026年の動向を踏まえて押さえておきたい視点
| 分野 | 主な動向 | 注意点 |
| 会計・経理 | AIエージェントによる自律処理の進展 | 例外対応・最終確認は人が担う |
| 労務・人事 | 法的リスクへの注意喚起の広がり | 個人情報保護・差別的取扱いへの配慮 |
| 各士業の専門業務 | 周辺業務からの活用拡大 | 専門判断が必要な部分への安易な依存を避ける |
よくある質問
Q. 2026年時点で生成AIの活用は士業事務所にとって必須といえるか。
必須と断定できる段階ではないが、会計・経理分野を中心に活用事例が着実に増えており、周辺業務の効率化という観点では導入を検討する価値が高まっていると考えられる。ただし分野や業務内容によって適した活用範囲は異なるため、自事務所の業務に照らして段階的に検討することが現実的である。
Q. 今後さらに規制やガイドラインが強化される可能性はあるか。
宅地建物取引士の重要事項説明のように、国の機関が業務ごとの取扱いを整理する動きはすでに始まっており、今後も分野ごとにガイドラインが整備されていく可能性がある。士業事務所としては、最新の公式情報を継続的に確認する姿勢が求められる。
Q. 動向を把握するにはどのような情報源を確認すればよいか。
各サービスの公式サイトの発表内容に加え、日本公認会計士協会や国土交通省など関係省庁・団体が公表する情報を確認することが基本になる。具体的な料金や機能、制度の詳細は随時更新されるため、記事や比較サイトの情報だけに頼らず、一次情報にあたる習慣を持つことが望ましい。
まとめ
2026年の生成AI活用動向を俯瞰すると、会計・経理分野でのAIエージェントによる自律処理の進展、労務・人事分野での法的リスクへの注意喚起、各士業の専門業務における活用範囲の広がりという三つの流れが並行して進んでいることがわかる。士業事務所としては、効率化のメリットを取り込みつつ、最終判断や例外対応は専門家が担うという原則を維持しながら、最新の公式情報を継続的に確認していく姿勢が求められる。

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