生成AIは、社内マニュアルや業務手順書の構成案作成、既存の手順の言語化、文章の整理・分かりやすい表現への修正といった場面で活用でき、士業事務所における業務の引き継ぎ効率化にも役立つ。ただし手順の正確性そのものはAIが保証できるものではなく、実際の業務内容と照らし合わせた確認は必ず人が行う必要がある。
社内マニュアル作成に生成AIを使うメリット
士業事務所では、担当者の異動や退職に伴う業務の引き継ぎがしばしば課題になる。属人化した業務のやり方を言語化し、マニュアルとして残す作業は手間がかかるため後回しにされがちだが、生成AIを使えば、担当者が話した内容や箇条書きのメモをもとに、読みやすい手順書の形に整理する作業を効率化できる。
具体的な作成の流れ
たとえば、ある業務について担当者が「まず顧客から資料を受け取り、次に内容を確認して、不備があれば連絡し、問題なければ入力作業に進む」といった大まかな流れを箇条書きで伝えると、生成AIはそれを見出し付きの手順書形式に整理し、必要に応じて注意点や確認事項の欄を追加した構成案を提示できる。ゼロから文書構成を考える手間を減らせる点が、生成AI活用の大きな利点といえる。
士業事務所での引き継ぎ業務への活用
司法書士事務所や税理士事務所、社労士事務所などでは、登記書類の作成手順、顧問先ごとの対応ルール、申請書類の提出フローなど、事務所ごとに細かなルールが存在することが多い。こうした業務知識を担当者の頭の中だけに留めず、生成AIを使って文書化しておくことで、急な休職や退職が発生した場合でも、他のスタッフが業務内容を把握しやすくなる。
マニュアル作成で押さえておきたいチェックポイント
マニュアル作成にあたっては、次の点を確認しながら進めるとよい。(1)生成AIが整理した手順が実際の業務の流れと一致しているか担当者が確認する、(2)顧客情報や機密情報を生成AIに入力する際は事前に社内のルールを確認する、(3)完成したマニュアルは一度作って終わりにせず、業務フローの変更に応じて定期的に見直す、(4)専門的な判断が必要な部分については、マニュアルに「必ず有資格者が確認する」旨を明記しておく。
既存資料の整理にも活用できる
すでに存在する古いマニュアルや、断片的に残っているメモ・チェックリストがある場合は、それらを生成AIに読み込ませて内容を統合し、重複や矛盾している箇所を洗い出してもらう、という使い方も効率的である。長年蓄積された資料は表現の統一が取れていないことが多いため、生成AIに用語や書式をそろえた形で整理し直してもらうことで、複数の担当者が読んでも理解しやすいマニュアルに仕上げやすくなる。
生成AIでマニュアルを作成する際の注意点
生成AIは文章の整理や構成案の提示には役立つ一方、業務の正確な手順そのものを把握しているわけではない。生成AIが提示した手順に事実と異なる内容が含まれていないか、必ず実際の担当者が確認したうえで公開する必要がある。また、社内規程や稟議規程など、法的な意味合いを持つ文書を整備する場合は、通常のマニュアル作成以上に慎重な確認が求められる。
マニュアルの形式・粒度を工夫する
マニュアルは細かすぎても読まれにくく、大まかすぎても実際の引き継ぎに役立たない。生成AIを使う際は、まず全体の業務の流れを大まかな見出しで整理してもらい、そのうえで特に間違いやすい工程や、過去にトラブルが起きた工程についてだけ詳しく手順や注意点を書き加えていく、という進め方をすると、読みやすさと実用性のバランスを取りやすい。図やフローチャートで示したほうが分かりやすい工程については、生成AIに文章での説明案を作らせたうえで、実際の図解は担当者が別途作成するといった役割分担も現実的である。
社内のナレッジ共有という観点では、「社内FAQ・ナレッジ管理に生成AIを使う方法―士業事務所での活用例」もあわせて参考にすると、マニュアルとFAQを組み合わせた引き継ぎ体制を検討しやすくなる。
よくある質問
Q. 生成AIに業務内容を全て話せば自動でマニュアルが完成するか。
構成案や下書きの作成までは効率化できるが、それだけで完成品にはならない。生成AIが整理した内容が実際の業務と一致しているかを担当者が確認し、必要な修正を加えたうえで正式なマニュアルとして採用する必要がある。
Q. 顧客の情報を含む業務手順を生成AIに入力してもよいか。
顧客情報や機密情報を含む内容を外部の生成AIサービスに入力する場合は、事前に事務所内のルールや、利用するサービスのデータの取り扱い方針を確認する必要がある。必要に応じて、固有名詞を伏せた形で手順のみを入力するなどの工夫も検討したい。
Q. マニュアルは一度作れば見直す必要はないか。
業務の進め方や制度が変わることもあるため、定期的な見直しが必要である。マニュアルを作成した後も、業務フローに変更があった際には内容を更新し、常に実態に即した内容を保つようにしたい。
まとめ
生成AIは、士業事務所における社内マニュアルや業務手順書の作成を効率化し、属人化しがちな業務知識を引き継ぎやすい形に整理するうえで役立つツールである。ただし手順の正確性そのものはAIに丸投げできるものではなく、実際の担当者による確認と、機密情報の取り扱いへの配慮を欠かさないことが、引き継ぎ効率化を成功させる鍵になる。

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