退職手続きにおける案内文書――退職者への案内メールや退職の流れをまとめた書面など――の下書き作成には生成AIを活用できる。ただし、案内文書に記載する退職理由や退職日などの情報が、離職票や退職証明書といった書類の記載内容と食い違うと、退職者本人やハローワークとの間でトラブルにつながりかねない。生成AIはあくまで文章作成を補助する道具であり、記載内容の正確性や整合性の最終確認は人が担う必要がある。
退職手続きの案内文書が重要な理由
退職手続きに関する案内文書は、退職者が安心して手続きを進められるようにするための重要な情報源であり、内容に誤りや矛盾があると、退職者からの問い合わせ対応に追われたり、会社への信頼を損ねたりする原因になりかねない。生成AIを使えば案内文書の作成そのものは効率化できるが、正確性を欠いた案内をそのまま配布してしまうと、かえって手続きの混乱を招くおそれがある。
退職手続きで必要となる主な書類
退職時には、雇用保険の失業給付を受けるためにハローワークから交付される離職票や、労働基準法に基づき労働者から請求があった場合に使用者が交付する退職証明書など、複数の書類が関わってくる。どの書類がいつ必要になるか、記載すべき項目がどのようなものかは制度上の取り扱いによって変わり得るため、詳細はハローワークや厚生労働省の案内など公式情報で確認してほしい。
生成AIが案内文書作成でできること
退職手続きの案内文の下書き
退職が決まった従業員向けに送る案内メールや案内書面について、生成AIに下書きを作成させることで、一から文章を考える手間を省ける。会社の貸与物の返却、社会保険・雇用保険の手続き、退職金の有無といった一般的な項目の案内文は、たたき台として活用しやすい。退職理由(自己都合・会社都合など)によって案内すべき内容や必要書類が異なる場合があるため、退職理由の区分ごとにテンプレートを用意し、それぞれに応じた下書きを生成AIに作成させる運用も考えられる。
退職者向けFAQの作成
退職者からよく寄せられる質問(離職票はいつ届くか、健康保険の切り替えはどうするかなど)をもとに、FAQ形式の案内資料を生成AIに整理させることも可能だ。ただし、自社の実際の運用や制度の現行内容と一致しているかどうかは、必ず人事担当者が確認する必要がある。
手続きの流れのチェックリスト化
退職手続き全体の流れを、生成AIにチェックリスト形式でまとめさせることで、担当者や退職者本人が手続き漏れに気づきやすくなる。ただし、チェックリストの項目が自社の就業規則や実際の運用と一致しているかどうかは、事前に人が精査しておく必要がある。
離職票・退職証明書との整合性で注意すべき点
案内文書に記載する退職日や退職理由の表現が、離職票や退職証明書に記載する内容と食い違っていると、退職者本人が混乱するだけでなく、退職理由をめぐって認識の齟齬が生じるおそれもある。生成AIに案内文書を作成させる際は、離職理由の分類や退職日の表記など、実際に発行する書類の記載内容と突き合わせたうえで文言を統一することが望ましい。生成AIは入力された情報をもとに文章を生成するにすぎず、社内の別の書類との整合性を自動的に保証してくれるわけではない点に注意したい。
実務での役割分担
| 作業内容 | 生成AIに向く範囲 | 人が確認すべき範囲 |
| 案内メール・案内書面の下書き | 定型文言のたたき台作成 | 自社の実態・最新制度との整合性 |
| 退職者向けFAQの作成 | 想定質問と回答案の整理 | 記載内容が現行制度・自社運用と一致しているか |
| 離職票・退職証明書との突合 | 対応不可 | 退職日・退職理由等の記載相違がないかの確認 |
よくある質問
Q.生成AIに離職票そのものを作成させてもよいか。
離職票はハローワークが交付する書類であり、事業主が生成AIを使って離職票自体を作成するものではない。事業主側で作成・提出するのは離職証明書などハローワークへの届出書類であり、そこに記載する内容の下書きに生成AIを部分的に活用する場合であっても、退職理由や賃金等の記載内容は自社の記録と必ず突き合わせて確認する必要がある。
Q.退職証明書の記載内容も生成AIに考えてもらってよいか。
退職証明書に記載する項目のたたき台を生成AIに作成させること自体は可能だが、退職証明書は労働者から請求された事項について正確に記載する必要がある書類であるため、記載してよい事項の範囲や表現については、就業規則や関連する社内規程、必要に応じて専門家の確認を踏まえたうえで最終的な文言を確定させるべきである。
Q.退職者ごとに案内文書の内容を生成AIでカスタマイズしてもよいか。
退職理由や退職日、貸与物の有無など退職者ごとに異なる情報を反映したカスタマイズ自体は生成AIの得意な作業のひとつである。ただし、個人情報を含む内容を外部の生成AIサービスに入力する際は、利用するサービスの情報の取り扱いを確認し、自社の情報管理ルールに沿って運用する必要がある。
まとめ
退職手続きの案内文書は、生成AIを使って下書きやFAQ、チェックリストを効率的に作成できる領域のひとつである。一方で、離職票や退職証明書といった書類との間で退職日や退職理由の記載が食い違うと、退職者との間でトラブルに発展しかねない。生成AIが作成した文章はあくまでたたき台として扱い、実際に発行する書類との整合性は人事労務担当者が必ず確認したうえで、退職者に案内する運用を徹底したい。

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