「事務所のスタッフが生成AIを使い始めているが、どこまで任せていいのか判断に迷う」という声を、会計事務所の所長税理士からよく聞くようになりました。社労士業務における生成AI活用については別記事で取り上げましたが、税理士業務にも同様に、任せやすい業務と慎重であるべき業務があります。
生成AIを任せやすい業務
議事録や打ち合わせメモの下書き作成、税制改正情報や通達の要点整理、顧問先向けの一般的な説明資料のたたき台作成、社内マニュアルの作成支援などは、生成AIが比較的得意とする分野です。あくまで「たたき台」であり、税理士本人が内容を確認したうえで最終的な文書として完成させる前提であれば、業務時間の短縮に役立ちます。
任せるべきでない業務
| 業務 | 生成AIに任せる際のリスク |
| 税務判断・税額計算の最終確定 | 誤った税法解釈や古い税制にもとづく回答をそのまま採用するリスク |
| 申告書の作成・提出 | 税理士法上、申告書類の作成は税理士の独占業務であり、AIの出力をそのまま使うことは許されない |
| 個別具体的な税務相談への回答 | 事案の細部によって結論が変わるため、一般論での回答が誤解を招く可能性がある |
特に申告書の作成や税務代理は税理士法上の独占業務であり、生成AIに「作成させる」という発想自体がなじみません。生成AIはあくまで税理士の判断を助ける補助ツールであり、最終的な税務判断・押印・提出責任は税理士本人が負う、という原則を事務所全体で共有しておくことが重要です。
精度を確認する際の視点
生成AIの回答を業務に取り入れる際は、まず「その回答の根拠となる法令・通達は何か」を確認する習慣をつけることが大切です。生成AIは学習時点までの情報にもとづいて回答するため、直近の税制改正が反映されていない場合があります。回答をそのまま信じるのではなく、国税庁の公式情報やe-Gov法令検索などの一次情報にあたって裏付けを取ることが欠かせません。
よくある質問
Q. 生成AIに顧問先の決算数値を入力して分析させてもよいか。
A. 税理士法38条の守秘義務との関係で慎重な判断が必要です。入力した情報がAI提供事業者側でどのように扱われるか(学習に利用されないか等)を利用規約で確認し、法人向けの契約や事務所内ルールに沿って運用することが望まれます。
Q. 生成AIを使って作成した申告書類は、そのまま提出してよいか。
A. 申告書等の作成は税理士の独占業務であり、内容の正確性について税理士自身が確認・責任を負う必要があります。生成AIの出力はあくまで下書き・チェック材料として扱うべきです。
Q. 生成AIの導入で、若手スタッフの育成に影響はないか。
A. 単純な調べもの・下書き作成をAIに任せることで、スタッフがより実務的な判断力を養う時間に充てられるという意見がある一方、基礎知識の習得プロセスが疎かにならないよう、教育方針とあわせて検討することが望まれます。
事務所として導入する際の進め方
個々のスタッフが自己判断で生成AIを使い始めると、入力してよい情報の範囲や確認手順がスタッフごとに異なってしまいます。所内で「入力してよい情報」「必ず人が確認すべき業務」を明文化したルールを整備し、契約しているAIサービスの利用規約(学習利用の有無、データの保存期間など)をあわせて確認しておくことが、事務所全体でのリスク管理につながります。
まとめ
税理士業務における生成AIの活用は、あくまで税理士の判断を助ける補助ツールという位置づけを崩さないことが重要です。守秘義務との関係については、別記事「顧問先の情報を生成AIに入力してよいか?税理士法38条の守秘義務と生成AI利用の注意点」もあわせてご確認ください。

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