中小企業診断士は、企業経営の分析や助言を行う経営コンサルティング分野で唯一の国家資格です。企業経営者はもちろん、会計事務所や金融機関、コンサルティング業界で働く方からも人気が高く、キャリアアップを目指して受験を検討する方が増えています。そのような中小企業診断士試験について、令和8年度から大きな制度変更が行われることが公表されました。これまで最終関門とされてきた第2次試験の「口述試験」が廃止されるのです。本記事では、口述試験廃止の背景や試験日程・受験手数料の変更点、そして受験を検討している方が今後意識しておきたいポイントを、初めて中小企業診断士試験について知る方にもわかりやすく解説します。
中小企業診断士試験とはどのような資格か
中小企業の経営課題を支援する国家資格
中小企業診断士は、中小企業支援法に基づく国家資格で、企業の経営状態を分析し、経営戦略や業務改善の提案を行う専門家です。財務・会計、法務、マーケティング、生産管理、情報システムなど、経営に関する幅広い知識が求められることから「経営の総合診療医」と呼ばれることもあります。独占業務はありませんが、中小企業支援策の窓口相談員や補助金申請支援など、活躍の場は年々広がっています。
試験は1次試験・2次試験・実務要件の3段階
中小企業診断士になるためには、まずマークシート方式で7科目が出題される第1次試験に合格する必要があります。その後、筆記形式で4つの事例問題が出題される第2次試験に合格し、さらに実務補習または実務従事という形で一定の実務経験を積むことで、はじめて中小企業診断士として登録されます。これまでは第2次試験の筆記試験に合格した人だけが受けられる「口述試験」が最後の関門として設けられていました。
令和8年度から何が変わるのか
第2次試験の口述試験が廃止される
中小企業庁の発表によると、令和8年度の中小企業診断士試験から、第2次試験における口述試験が廃止されることになりました。口述試験は、筆記試験の解答内容などについて面接形式で質問されるもので、これまでは原則として欠席しない限りほとんどの受験者が合格してきたとされています。廃止の背景としては、試験を運営する日本中小企業診断士協会連合会において、人件費や会場費の高騰など経常的な経費が増加し、財政状況が厳しくなっていることが挙げられています。試験を安定的に実施していくために、受験者の負担軽減や経費削減、試験プロセスの効率化を目的として廃止が決定されたとされています。なお、口述試験が実施される最後の年度は令和7年度試験であり、令和8年1月に実施される予定です。それ以降の年度からは、第2次試験の筆記試験に合格すれば、口述試験を受けることなく実務補習・実務従事の段階に進めることになります。
受験手数料の内訳も見直しへ
口述試験の廃止にあわせて、受験手数料の内訳も変更される見込みです。報道等によれば、第1次試験の受験手数料はこれまでの14,500円から17,200円に、第2次試験(筆記試験)の受験手数料は17,800円から15,100円に改定される方向とされています。合計すると受験手数料の総額は32,300円となり、従来の総額から変わらない設計になっているようです。ただし、金額や実施時期などの詳細は今後変更される可能性もあるため、最終的な内容は日本中小企業診断士協会連合会や中小企業庁の公式発表で確認することをおすすめします。
受験生が意識しておきたい対策のポイント
対人対応力を示す機会は実務の場で
口述試験は、筆記試験の内容について面接形式で受け答えする中で、受験者のプレゼンテーション能力やコミュニケーション力を確認する役割も担っていたと考えられます。廃止後は、この力を試験の中で示す機会がなくなるため、実務補習や実務従事といった実際の現場で、経営者や関係者と対話しながら提案をまとめる経験を通じて、こうした力を意識的に磨いていくことがこれまで以上に大切になるといえるでしょう。
学習の軸はあくまで筆記試験の事例演習
試験制度が変わっても、第2次試験の合否を左右するのは筆記試験そのものであることに変わりはありません。事例Ⅰ(組織・人事)、事例Ⅱ(マーケティング・流通)、事例Ⅲ(生産・技術)、事例Ⅳ(財務・会計)という4つの事例問題に対して、与件文を的確に読み取り、設問の意図に沿った答案を作成する力を養うことが、引き続き合格への一番の近道です。過去問演習を通じて、時間内に論理的な文章を組み立てる練習を重ねていきましょう。
学習スケジュールの目安
令和8年度試験では、第1次試験が8月上旬、第2次試験(筆記試験)が10月下旬に実施される予定とされています。口述試験がなくなることで、筆記試験合格から資格取得までの期間がやや短縮される可能性がありますが、実務補習の開始時期など具体的な運用は年度によって変わることがあるため、あくまで目安として捉え、詳細は公式発表で確認するようにしましょう。
最新情報は必ず公式サイトで確認を
試験制度や日程、手数料などは年度によって変更される場合があります。学習計画を立てる際は、日本中小企業診断士協会連合会や中小企業庁が公表している最新の試験案内を必ず確認し、目安として紹介されている情報を鵜呑みにしすぎないよう注意しましょう。
口述試験廃止に関するよくある疑問
令和7年度に受験する方にも影響はあるか
口述試験が実施される最後の年度は令和7年度試験とされているため、令和7年度に第2次試験(筆記試験)を受験し合格した方は、これまでどおり口述試験を受ける必要があります。口述試験の廃止が適用されるのは令和8年度試験からであるため、受験年度によって対応が異なる点に注意しましょう。ご自身の受験がどちらの年度に該当するかは、あらためて公式の試験案内で確認することをおすすめします。
実務補習・実務従事の内容に変更はあるか
現時点で公表されている情報では、口述試験の廃止に伴って実務補習や実務従事の内容そのものが大きく変更されるとはされていません。ただし、試験制度全体が見直されている中で、今後関連する運用が変更される可能性もゼロではありません。実務要件を満たすための具体的な手続きについても、日本中小企業診断士協会連合会の公式サイトで最新情報を確認しながら進めるとよいでしょう。
中小企業診断士資格を取得するメリット
経営全般の知識を体系的に学べる
中小企業診断士試験の学習範囲は、企業経営理論やマーケティング、財務・会計、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業政策など多岐にわたります。実務でも役立つ知識を体系的に身につけられる点は、他の資格にはない大きな特徴です。会計事務所や金融機関に勤める方が、税務や会計以外の経営全般の視点を身につけるために受験するケースも少なくありません。
独立開業だけでなく企業内診断士としての活躍も
中小企業診断士というと独立開業のイメージを持たれる方も多いですが、実際には企業に勤めながら資格を活かす「企業内診断士」として活躍する方も多数います。社内での経営企画や新規事業立案、取引先である中小企業への提案業務など、活躍の場は業種を問わず広がっています。今回の口述試験廃止によって受験のハードルが下がるわけではありませんが、資格取得までの負担が一部軽減されることで、受験を検討する方の後押しになる可能性もあるでしょう。
まとめ
令和8年度から中小企業診断士試験の第2次試験における口述試験が廃止され、受験手数料の内訳も見直される見込みです。試験の負担が軽減される一方で、対人対応力を示す機会は実務の現場に移っていくと考えられます。制度が変わっても合格の鍵を握るのは、引き続き筆記試験における事例問題への対応力です。最新の試験情報は必ず公式サイトで確認しながら、着実に学習を進めていきましょう。

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