令和8年度税制改正大綱では、相続税・贈与税に関わるいくつかの見直しが盛り込まれました。中でも、これまで多くの家庭で活用されてきた教育資金の一括贈与の非課税措置が終了することや、賃貸不動産を使った相続税対策に影響する評価方法の見直しは、相続や贈与を検討している方にとって見逃せない内容です。制度の変更は、これから相続対策を始めようとしている方だけでなく、すでに対策を進めている方の計画にも影響する可能性があります。この記事では、令和8年度税制改正における相続税・贈与税の主な変更点について解説します。
税制改正の内容は、税制改正大綱の公表後、国会での法案審議・成立を経て正式に確定します。本記事は執筆時点で公表されている情報に基づく一般的な解説であり、実際の適用にあたっては国税庁の最新情報や税理士への確認をおすすめします。
教育資金の一括贈与に係る非課税措置が終了へ
制度の概要とこれまでの役割
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、祖父母などの直系尊属から30歳未満の子や孫に対して、教育資金として一括贈与を行った場合に、受贈者1人につき最大1,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。平成25年の創設以来、何度か適用期限が延長されながら、資産を持つ高齢世代から若い世代への資金移転を促す制度として活用されてきました。
令和8年3月31日で適用期限を迎える
国税庁の公表情報によると、この非課税措置の適用期限は令和8年3月31日までとされており、延長は行われずに終了することとされています。したがって、令和8年4月1日以後に新たに教育資金の一括贈与を行う場合には、この非課税措置を利用することができません。なお、令和8年3月31日までに拠出された信託受益権や金銭等については、その後も引き続き非課税措置の適用を受けられます。既に制度を利用している場合でも、今後の管理方法について確認しておくと安心です。
制度終了を踏まえた検討のポイント
教育資金の一括贈与を検討している場合には、期限までに手続きが間に合うかどうかを早めに確認する必要があります。また、制度終了後は、暦年贈与や都度贈与(必要な都度、教育費を贈与する方法)など、他の方法による資金援助のあり方を検討することになります。どの方法が適しているかは、家庭の状況や贈与する金額によって異なるため、税理士に相談しながら検討することをおすすめします。
賃貸不動産(貸付用不動産)の評価方法が見直しへ
これまでの評価方法と節税策としての活用
相続税における不動産の評価額は、実際の取引価格(時価)よりも低くなることが多く、現金を不動産に組み替えることで相続税評価額を圧縮する対策が広く行われてきました。特に、賃貸用の不動産は、貸家建付地・貸家としての評価減を受けられることから、相続税対策として活用されるケースが多く見られました。こうした評価と時価との乖離を利用した節税策は、これまでも度々見直しの議論の対象となってきた経緯があります。
一定の貸付用不動産は評価方法が変わる見込み
令和8年度税制改正大綱では、被相続人等が相続開始前5年以内に、対価を伴う取引によって取得または新築した一定の貸付用不動産について、評価方法を見直すことが盛り込まれました。対象となる不動産は、取得価額をもとに地価の変動等を考慮して計算した価額の80%相当額で評価されることとなる見込みです。この見直しは、令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価から適用される予定とされており、直近の相続にはただちに影響しない点にも留意が必要です。
不動産小口化商品の評価方法も見直しの対象に
あわせて、複数の投資家が小口の持分で不動産に投資する「不動産小口化商品」についても、評価方法の見直しが検討されています。これらの見直しは、市場価格と相続税評価額の乖離を利用した過度な節税を抑制し、課税の公平性を確保することを目的としているとされています。今後、賃貸不動産を活用した相続対策を検討する際には、この評価方法の見直しを踏まえたシミュレーションが必要になります。
そのほかの主な変更点
農地等の納税猶予に関する措置の延長
農業を営む方などが対象となる、農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度についても見直しが行われる見込みです。具体的には、納税猶予の対象となっている農地等を収用交換等により譲渡した場合に利子税の全額を免除する措置について、適用期限が延長される方向とされています。農業を営む方や後継者にとっては、引き続き制度を活用しやすい環境が維持されることになります。
相続・贈与を検討している方が今できること
早めの情報収集と専門家への相談
税制改正の内容は、税制改正大綱の公表後、国会での審議を経て正式に法律として成立します。そのため、大綱の内容がそのまま実施されるとは限らない点にも注意が必要です。相続税・贈与税対策を検討している方は、最新の国税庁の公表情報を確認するとともに、早めに税理士などの専門家に相談し、ご自身の状況に合った対応を検討することをおすすめします。
教育資金贈与を検討中の場合は期限に要注意
特に教育資金の一括贈与を検討している方は、令和8年3月31日という具体的な期限があるため、金融機関での手続きに要する期間も見込んだうえで、早めに準備を進めることが大切です。手続きが期限に間に合わなかった場合、想定していた非課税措置を利用できなくなるおそれがあるため、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。
よくある質問
教育資金の一括贈与を既に利用している場合、影響はありますか
令和8年3月31日までに拠出した信託受益権や金銭等については、制度が終了した後も引き続き非課税措置の対象となります。ただし、受贈者が30歳に達した時点などで残額がある場合には、その残額に贈与税が課税される場合があるため、既に制度を利用している方も、契約内容や残高について改めて確認しておくことをおすすめします。
貸付用不動産の評価見直しは、すべての賃貸不動産が対象ですか
見直しの対象となるのは、被相続人等が相続開始前5年以内に、対価を伴う取引によって取得または新築した一定の貸付用不動産です。以前から長期間保有している賃貸不動産については、今回の見直しの対象とはならない見込みです。ただし、正式な適用要件は法律の成立後に確定するため、該当するかどうかの判断は税理士に確認することをおすすめします。
令和8年度税制改正大綱はどこで確認できますか
税制改正大綱は、与党の税制調査会での議論を経て毎年12月頃に公表され、その後、財務省や国税庁のホームページでも関連資料が公開されます。大綱の内容は、翌年の通常国会での法案審議・成立を経て正式に確定するため、最新の法律案の内容や国税庁が公表する解説資料もあわせて確認することをおすすめします。
相続税対策は誰に相談すればよいですか
相続税対策は、家族構成や財産の内容、将来のライフプランによって最適な方法が異なるため、税理士など専門家への相談が基本となります。特に不動産を多く保有している場合や、事業承継を伴う場合は、税務だけでなく法務の視点も必要になることがあるため、司法書士や弁護士とも連携しながら進める税理士事務所に相談するのも一つの方法です。
まとめ
令和8年度税制改正大綱では、教育資金の一括贈与に係る非課税措置の終了や、一定の貸付用不動産の評価方法の見直し、農地等の納税猶予に関する措置の延長など、相続税・贈与税に関わる複数の変更が盛り込まれています。これらの改正は、それぞれ適用時期や対象となる要件が異なるため、ご自身の状況に照らして影響を確認することが大切です。正式な制度内容は、法律の成立後に国税庁が公表する情報で必ずご確認ください。

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