電子帳簿保存法における電子取引データの保存義務化は、多くの企業にとって経理実務のデジタル化を迫る大きな変更でした。制度開始から数年が経過した今も、猶予措置を活用しながら対応を進めている事業者は少なくありません。この記事では、2026年時点での電子帳簿保存法の実務対応について整理します。制度の適用関係は個々の事業者の状況によって異なるため、詳細は国税庁の公式情報や顧問税理士にご確認ください。
電子取引データ保存義務化の経緯
電子帳簿保存法の改正により、2022年1月以降、メールやウェブサイトを通じてやり取りした請求書・領収書などの電子取引データについては、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが原則として義務付けられました。制度導入直後は2年間の宥恕措置が設けられ、2023年12月31日をもって終了しています。その後、2024年1月以降は、一定の要件のもとで認められる「猶予措置」に切り替わり、現在に至っています。
そもそも電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法は、税法上保存が義務付けられている帳簿書類について、一定の要件のもとで電子データによる保存を認める法律です。国税関係帳簿書類の電子保存、スキャナ保存、そして本記事のテーマである電子取引データの保存という3つの区分があり、それぞれ要件が異なります。このうち電子取引データの保存は、他の2つとは異なり、要件を満たした電子保存が「義務」とされている点が特徴です。
猶予措置とはどのような仕組みか
猶予措置とは、電子取引データの保存について、改ざん防止措置や検索機能の確保といった本来の保存要件を満たすことが難しい「相当の理由」がある事業者に対して、税務署長の判断により、要件を満たさない形での保存(ダウンロードへの対応を条件に、単にデータを保存しておくだけの状態)を認める仕組みです。
猶予措置の適用を受けるためには、税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求めと、その電子取引データを出力した書面の提示または提出の求めに、それぞれ応じられるようにしておく必要があるとされています。猶予措置はあくまで経過的な取り扱いであるため、対応が可能になり次第、本来の保存要件を満たす体制に移行していくことが求められます。
2026年時点で企業が確認しておきたいポイント
自社が猶予措置の対象に該当するか
猶予措置は、システム整備が間に合わないなど「相当の理由」がある場合に認められるものであり、単に「対応が面倒だから」という理由では認められません。自社がどのような理由で本来の保存要件を満たせていないのか、その理由が猶予措置の対象として認められるものかどうかを、改めて確認しておく必要があります。
保存要件を満たすための体制整備
電子取引データの保存要件には、主に「真実性の確保」(改ざん防止のための措置)と「可視性の確保」(検索機能の確保など)があります。タイムスタンプの付与や、訂正・削除の履歴が残るシステムの導入、取引年月日・金額・取引先で検索できる状態を整えることなど、要件を満たすための具体的な対応を計画的に進めることが重要です。
会計・経理システムの見直し
多くの会計ソフトや経理システムでは、電子帳簿保存法の要件に対応した保存機能が搭載されるようになっています。自社で利用しているシステムが最新の要件に対応しているかを確認し、対応していない場合は、システムの見直しやアップデートを検討することをおすすめします。
社内のルール整備と従業員への周知
電子取引データの保存は、経理担当者だけでなく、日常的に取引先とのやり取りを行う従業員全体に関わる問題です。どのデータを、どのように保存するのか、社内ルールを整備し、従業員に周知しておくことで、保存漏れや誤った運用を防ぐことができます。
よくある疑問に答えます
猶予措置を使い続けることに問題はないか
猶予措置は、あくまで「相当の理由」がある場合の経過的な取り扱いです。理由なく漫然と猶予措置を使い続けることは想定されておらず、税務調査等の際には、なぜ本来の保存要件を満たせていないのか、その理由を説明できるようにしておく必要があります。可能な範囲でシステム対応を進めていく姿勢が求められます。
紙の請求書や領収書はどうすればよいか
電子帳簿保存法の対象となるのは、あくまで電子的にやり取りされた取引データです。もともと紙で受け取った請求書や領収書については、これまで通り紙のまま保存することも認められており、無理にすべてをスキャンして電子化する義務があるわけではありません。電子取引と紙の取引を混同しないよう、社内で整理しておくことが大切です。
小規模な個人事業主でも対応は必要か
電子帳簿保存法の電子取引データ保存義務は、企業規模にかかわらず、個人事業主を含むすべての事業者が対象です。取引量が少ない場合でも、メールでやり取りした請求書などがあれば対象になるため、規模の大小にかかわらず基本的なルールを理解しておく必要があります。
クラウド会計ソフトを活用した対応
電子帳簿保存法への対応を進めるうえで、多くの事業者が活用しているのがクラウド会計ソフトです。クラウド会計ソフトの中には、請求書や領収書のデータを取り込むだけで、検索要件を満たす形で自動的に保存してくれる機能を備えたものもあります。手作業でのファイル管理に限界を感じている場合は、こうしたツールの導入を検討することで、日々の業務負担を軽減しながら法令対応を進めることができます。ツールの選定にあたっては、自社の取引量や既存の会計システムとの連携のしやすさも踏まえて比較検討するとよいでしょう。
経理DXの一歩として捉える
電子帳簿保存法への対応は、単なる法令遵守のための作業と捉えるだけでなく、経理業務全体をデジタル化していく良い機会として前向きに活用することもできます。この機会に自社の経理フローを見直し、効率化につなげていく視点を持つことをおすすめします。
まとめ
電子帳簿保存法における電子取引データの保存義務化は、2024年1月以降、猶予措置を活用しながら対応を進める事業者が多い状況が続いています。猶予措置はあくまで経過的な取り扱いであるため、自社が対象となる理由を正しく理解したうえで、真実性・可視性の確保に向けた体制整備を計画的に進めていくことが重要です。制度の詳細や今後の見直しの動向については、国税庁の公式情報を継続的に確認することをおすすめします。

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