生成AIへの指示(プロンプト)がうまくいかない原因の多くは、AIに何をしてほしいかが一文にまとまりすぎていて、必要な情報が不足していることです。この記事で紹介するテンプレートは、いずれも「基本形」からスタートし、「前提情報を足した改善形」「出力形式や条件まで指定した実務向け」の順で改善しています。この流れを覚えておくと、他の業務にも応用できます。
準備:プロンプトを書く前に整理すること
テンプレートを使う前に、次の3点を自分の中で整理しておくと、AIへの指示がぶれにくくなります。
- 誰が読むための文章か(社内向けか、社外向けか)
- どのくらいの長さ・形式にしたいか(箇条書き、表、文章など)
- 入力してよい情報かどうか(個人情報や機密情報が含まれていないか)
最後の点は特に重要です。個人情報保護委員会は、生成AIサービスへの個人情報の入力について「利用目的の範囲内かどうかを十分に確認すること」を事業者・利用者双方に呼びかけています。議事録やメールには顧客名や取引情報が含まれることが多いため、入力前に社名・個人名を仮名に置き換えるなどの配慮が必要です。
テンプレート1:議事録の要約・整理
【基本形】
「この会議の内容を要約してください。」
基本形だけでは、AIはどのくらいの粒度で、どんな形式でまとめればよいか分からず、期待とずれた出力になりがちです。
【改善形】
「以下は社内会議の文字起こしです。決定事項・懸念点・次のアクションに分けて、箇条書きで要約してください。」
【実務向け(さらに条件を追加)】
「以下は〇〇プロジェクトの定例会議の文字起こしです。次の形式で議事録を作成してください。
- 会議日時・参加者(文字起こしに記載がある場合のみ)
- 決定事項(箇条書き、3行以内)
- 懸念点・保留事項(箇条書き)
- 次のアクション(担当者・期限が分かる場合は明記、不明な場合は『要確認』と記載)
推測で担当者や期限を補わず、記載がない場合は『記載なし』としてください。」
このように「推測で補わない」という条件を加えることで、AIが事実にない情報を作ってしまう(ハルシネーション)リスクを減らせます。
テンプレート2:ビジネスメールの下書き
【基本形】
「取引先に納期遅延を伝えるメールを書いてください。」
【改善形】
「以下の状況を踏まえて、取引先の担当者に納期遅延をお詫びするメールを書いてください。
・状況:〇〇の部材調達が遅れており、納品が1週間遅れる見込み
・トーン:丁寧だが簡潔に」
【実務向け(さらに条件を追加)】
「以下の状況を踏まえて、取引先の担当者宛のメール文面を作成してください。
・状況:〇〇の部材調達が遅れており、納品が1週間遅れる見込み
・宛先:〇〇株式会社 △△様(面識のある取引先)
・トーン:丁寧だが簡潔に、言い訳がましくならないようにする
・含めてほしい要素:お詫び、遅延の概要、新しい納期見込み、今後の連絡方法
・文字数:300字程度
出力後、件名の案も1つ提案してください。」
宛先や関係性、含めてほしい要素を具体的に伝えるほど、修正の手間が減ります。ただし、AIが作成した文面をそのまま送信するのではなく、事実関係(納期や担当者名など)は必ず自分で確認してから送るようにしましょう。
テンプレート3:資料・記事の要約
【基本形】
「この文章を要約してください。」
【改善形】
「以下の文章を、要点3つに絞って箇条書きで要約してください。」
【実務向け(さらに条件を追加)】
「以下の文章を、社内共有用に要約してください。
・要点を3つまでの箇条書きにする
・専門用語には簡単な説明を添える
・元の文章に書かれていない情報は追加しない
・数字や固有名詞は元の文章の表記のまま使う
要約後、この文章から読み取れない・判断できない点があれば『不明点』として別途挙げてください。」
「元の文章にない情報は追加しない」という条件は、AIが事実と異なる補足をしてしまうのを防ぐうえで特に有効です。
テンプレート4:資料構成のたたき台作成
【基本形】
「〇〇についての資料を作ってください。」
【改善形】
「〇〇についての社内向け説明資料の構成案を、見出しレベルで箇条書きにしてください。」
【実務向け(さらに条件を追加)】
「〇〇について、社内の非専門部署向けに説明する資料の構成案を作成してください。
・想定する読み手:△△部門のメンバー(専門知識はない前提)
・構成は『背景』『現状』『課題』『対応案』の4パートに分ける
・各パートの見出しと、話す内容の要点を1〜2行で添える
・具体的な数値データは含めず、後で自分が追記できるよう『(ここに数値を挿入)』のように空欄を示す」
資料作成では、AIに数値や事実を創作させないことが特に重要です。空欄を明示させておくことで、後から自分が正確なデータを追記でき、事実と異なる数字が紛れ込むリスクを避けられます。
うまくいかない場合の確認ポイント
- 出力が抽象的すぎる場合は、「箇条書きで」「〇文字以内で」など、形式や分量を具体的に指定してみましょう。
- 事実と違う内容が含まれる場合は、「元の文章にない情報は追加しない」という条件を加えると改善することがあります。
- 何度もやり取りが必要な場合は、最初のプロンプトに「不明な点があれば先に質問してください」と加えておくと、手戻りを減らせます。
注意点:情報漏洩を避けるために
IPA(情報処理推進機構)は、生成AI利用者向けの資料の中で「クラウドAIに営業秘密は教えない」という原則を明示しています。議事録やメールのテンプレートを使う際は、次の点に注意してください。
- 顧客名・取引金額・未公開情報などは、可能な範囲で仮名や記号に置き換えてから入力する
- 会社として利用してよい生成AIサービスや入力範囲のルールがある場合は、それに従う
- 出力された文章をそのまま外部に送る前に、事実確認と機密情報のチェックを人が行う
よくある質問
Q. プロンプトは日本語と英語どちらがいいですか。
A. 多くの主要な生成AIサービスは日本語の指示にも対応しています。まずは日本語で具体的に指示し、思うような出力が得られない場合に表現を変えてみる、という進め方で問題ありません。
Q. 長いプロンプトを書くのが苦手です。短くてもいいですか。
A. 短いプロンプトでも構いませんが、「誰向けか」「どんな形式か」「入れてほしい要素」の3点だけは意識すると、出力の精度が上がりやすくなります。
Q. AIが作った文章をそのまま送っても大丈夫ですか。
A. 特にビジネスメールや議事録は、事実関係(日時・金額・担当者名など)に誤りがないかを必ず自分で確認してから使うことをおすすめします。生成AIは確率的に文章を組み立てるため、事実と異なる内容を出力する可能性があります。
まとめ
プロンプトは「基本形」から始めて、前提情報や出力形式を少しずつ加えていくことで、実務で使える精度に近づけられます。あわせて、入力する情報に機密情報や個人情報が含まれていないかを確認する習慣も忘れないようにしましょう。
次に取るべき行動
紹介したテンプレートのうち、自分が最もよく行う業務(議事録・メール・要約のいずれか)を1つ選び、実際の業務データではなく仮のデータで一度試してみましょう。

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