日本にはすべての人が何らかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」があり、大きく分けると「国民健康保険」と「社会保険(健康保険)」の2つの制度があります。転職や退職、独立のタイミングでどちらに加入するのか迷う方も多いのではないでしょうか。この記事では、両者の違いを複数の観点から整理します。
日本の国民皆保険制度について
日本では、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられており、これを国民皆保険制度と呼びます。この制度により、誰もが一定の自己負担割合で医療機関を受診できる体制が整えられています。国民健康保険と社会保険は、この国民皆保険制度を支える2つの大きな柱と言える存在です。
加入対象者の違い
社会保険(健康保険)は、主に会社員や公務員など、企業や団体に雇用されている方が加入する保険です。一定の労働時間・日数の要件を満たすパート・アルバイトの方も加入対象となります。一方、国民健康保険は、自営業者やフリーランス、無職の方、年金受給者など、社会保険の加入対象とならない方が加入する保険で、市区町村が運営しています。
保険料の違い
保険料の負担方法
社会保険の保険料は、会社と従業員が半分ずつ負担する「労使折半」という仕組みになっています。標準報酬月額に応じて保険料が決まり、給与から天引きされる形で納付されます。一方、国民健康保険の保険料(自治体によっては保険税と呼ばれることもあります)は、加入者本人が全額を負担する必要があり、前年の所得や世帯の加入者数などをもとに市区町村ごとに算定されます。
扶養の考え方の違い
社会保険の大きな特徴の一つが「扶養」という考え方です。一定の要件を満たす配偶者や子どもなどの家族は、被扶養者として保険料の負担なく健康保険の給付を受けることができます。一方、国民健康保険には扶養という考え方がなく、世帯の中で国民健康保険に加入する家族それぞれについて、保険料が計算される仕組みになっています。そのため、扶養家族が多い世帯の場合、社会保険と国民健康保険とで保険料の負担感に差が出ることがあります。
給付内容の違い
社会保険(健康保険)には、病気やケガで働けなくなった際の生活を支える「傷病手当金」や、出産のために休業した際の「出産手当金」といった、所得を保障する給付制度が用意されています。一方、国民健康保険には、こうした所得保障の給付が基本的に用意されていません。医療費の自己負担割合など、医療を受ける際の基本的な保障内容については、両制度とも大きな差はありません。
どのようなタイミングで切り替えが必要になるか
就職・転職のタイミング
就職して会社の社会保険に加入する場合、それまで加入していた国民健康保険からの切り替え手続きが必要になります。多くの場合、会社側で社会保険の加入手続きを行ってくれますが、国民健康保険の脱退手続きは、加入者自身が市区町村の窓口で行う必要がある点に注意が必要です。
退職のタイミング
会社を退職すると、社会保険の資格を喪失するため、次の就職先が決まっていない場合は、国民健康保険への加入か、それまで加入していた社会保険の「任意継続」のいずれかを選択することになります。任意継続を選択する場合、それまで会社が負担していた保険料も自己負担することになるため、保険料が上がるケースがある一方、扶養の仕組みを引き続き利用できるというメリットもあります。どちらが有利になるかは、家族構成や前年の所得によって異なるため、退職前に試算しておくことをおすすめします。
よくある疑問に答えます
個人事業主でも社会保険に加入できることはあるのか
原則として個人事業主本人は国民健康保険の対象ですが、法人化して自分自身を役員として登記した場合や、一定規模以上の個人事業所で従業員を社会保険に加入させる場合など、社会保険に関わる場面は状況によって異なります。法人化を検討している場合は、社会保険料の負担がどう変わるかも含めて試算しておくとよいでしょう。
保険料はどちらが安くなるのか
一概にどちらが安いとは言えず、年収や家族構成、扶養家族の有無によって異なります。一般的に、扶養家族が多い方は、扶養の仕組みがある社会保険の方が世帯全体としての負担を抑えやすい傾向があるとされています。個別のケースでどちらが有利かを知りたい場合は、保険料の試算を行っている専門家や自治体の窓口に相談することをおすすめします。
手続きが遅れた場合はどうなるか
社会保険の資格喪失後、国民健康保険への切り替え手続きが遅れた場合でも、保険料はさかのぼって発生することが一般的です。手続きが遅れるほど、まとめて保険料を支払う負担が大きくなることもあるため、退職や転職の際は、早めに手続きを済ませることを心がけましょう。
任意継続という第三の選択肢
退職後の医療保険を考える際、国民健康保険への加入だけでなく、それまで加入していた健康保険を最長一定期間継続できる「任意継続被保険者制度」という選択肢もあります。任意継続では、在職中に会社が負担していた分も自己負担することになるため、保険料自体は上がることが多い一方、扶養の仕組みを引き続き利用できるというメリットがあります。国民健康保険と任意継続、どちらの保険料が安くなるかは世帯の状況によって異なるため、退職前に両方の見積もりを確認し、比較検討することをおすすめします。
制度の違いを理解して適切な選択を
国民健康保険と社会保険は、それぞれ異なる仕組みで運営されているため、自分がどちらに加入すべきか、あるいは選択の余地がある場面でどちらが有利かを、正しい知識を持って判断することが大切です。迷った際は自治体や勤務先の窓口に相談しながら手続きを進めましょう。
まとめ
国民健康保険と社会保険(健康保険)は、加入対象者、保険料の負担方法、扶養の考え方、給付内容といった点で違いがあります。社会保険には扶養の仕組みや傷病手当金などの所得保障がある一方、国民健康保険にはこうした制度が基本的にないという違いを理解しておくことが大切です。就職・転職・退職などのタイミングで切り替えが必要になった際は、加入手続きの期限にも注意しながら、早めに手続きを進めるようにしましょう。

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