個人事業主にとって毎年の一大イベントである確定申告。2027年(令和9年分)の確定申告では、青色申告特別控除の要件見直しや、インボイス制度の「2割特例」の終了など、実務に影響する変更がいくつか予定されています。この記事では、2027年の確定申告に向けて個人事業主が知っておきたい変更点と、今から準備しておきたいことを整理します。なお、税制の詳細は今後の国税庁発表等で確定していく部分もあるため、最終的な取り扱いは公式情報でご確認ください。
2027年分の確定申告で変わる主なポイント
青色申告特別控除の要件見直し
青色申告特別控除には現在、最大65万円(一定の要件を満たす場合)、55万円、10万円という区分がありますが、令和9年分(2027年分)以後の所得からは、デジタル化に関する要件が見直され、e-Taxによる申告や優良な電子帳簿保存などの要件を満たさない場合、控除額が一律10万円になるとされています。これまで65万円控除を受けてきた個人事業主にとっては、申告方法を見直す必要が生じる可能性があるため、早めの確認が欠かせません。
インボイス制度「2割特例」の終了
インボイス制度に登録した免税事業者だった個人事業主向けの負担軽減措置である「2割特例」(納付税額を売上税額の2割に軽減できる特例)は、2026年分の申告が適用の最終年度とされており、2027年の確定申告からは対象外となる見込みです。2割特例が使えなくなると、簡易課税制度を選択するか、原則(本則)課税で計算するかを検討する必要が出てきます。
基礎控除額の変更
前述の年末調整の解説とも関連しますが、所得税の基礎控除額は令和8年度税制改正により見直しが行われており、個人事業主の所得税額の計算にも影響します。具体的な控除額は所得水準によって異なるため、申告の際は国税庁が公表する最新の控除額を確認することが重要です。
青色申告特別控除を維持するために必要なこと
e-Taxでの申告
控除額を維持するための要件の一つとして、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用した申告が挙げられています。まだ書面での申告を続けている個人事業主は、早めにe-Taxの利用環境(マイナンバーカードやICカードリーダライタ、または対応するスマートフォン等)を整えておくとよいでしょう。
優良な電子帳簿保存
もう一つの要件が、一定の要件を満たす「優良な電子帳簿」による帳簿保存です。会計ソフトの選定や、電子帳簿保存法の要件を満たす運用体制の整備には一定の準備期間が必要になるため、対応を検討している場合は早めに会計ソフト会社や税理士に相談することをおすすめします。
インボイス2割特例終了後の対応
簡易課税制度への切り替え検討
2割特例が使えなくなった後の選択肢の一つが簡易課税制度です。簡易課税制度は、業種ごとに定められたみなし仕入率を用いて納付税額を計算する方法で、実際の仕入れ・経費の集計をせずに計算できるという事務負担軽減のメリットがあります。ただし、事前に届出書の提出が必要であり、適用を受けたい課税期間の開始前までに手続きを済ませておく必要がある点に注意が必要です。
本則課税との比較
一方、実際の課税仕入れが多い事業者の場合は、簡易課税よりも本則課税(原則課税)の方が納税額を抑えられるケースもあります。どちらが有利になるかは業種や取引の内容によって異なるため、2割特例が使えなくなる前に、両方の方式で試算し比較検討しておくことが望ましいでしょう。
個人事業主が今から準備しておきたいこと
2027年分の確定申告に向けては、青色申告特別控除75万円を維持するためのe-Tax対応・電子帳簿保存の準備、インボイス2割特例終了を見据えた課税方式(簡易課税・本則課税)の検討、基礎控除など所得税の計算方法の変更の把握という3つの観点から準備を進めておくと安心です。特に電子帳簿保存やe-Taxの環境整備には一定の準備期間がかかるため、確定申告の直前になって慌てないよう、早めに取り組み始めることをおすすめします。
税理士への相談タイミング
制度改正の内容は複雑で、個々の事業内容によって影響の大きさも異なります。青色申告特別控除やインボイスの特例終了の影響が大きいと感じる場合は、確定申告の直前ではなく、余裕をもった時期に税理士へ相談し、対応策を検討しておくことをおすすめします。
帳簿・書類の保存にも注意
確定申告に関連する帳簿や領収書などの書類は、青色申告の場合、原則として一定期間(多くは7年間)の保存が義務付けられています。電子帳簿保存法に対応してデータで保存する場合も、保存期間や検索要件など満たすべき条件があるため、制度の詳細を国税庁の案内で確認しながら、日頃から整理された状態で保存しておくことが大切です。
所得税以外にも注意したい変更点
扶養親族等の所得要件の見直し
基礎控除の見直しにあわせて、配偶者控除や扶養控除の対象となる親族の所得要件も見直される見込みです。個人事業主自身の所得だけでなく、家族を扶養に入れている場合は、家族の所得がこの新しい要件の範囲内に収まっているかどうかを確認しておく必要があります。特に、家族が別途パート収入などを得ている場合は、収入の見込みを早めに把握しておくと、確定申告の際に慌てずに済みます。
地方税(住民税)への影響
所得税の基礎控除等の見直しは、住民税(地方税)の計算に必ずしもそのまま連動するとは限らず、所得税と住民税とで基礎控除額の扱いが異なる可能性がある点にも注意が必要です。個人事業主の場合、所得税の確定申告の内容がそのまま住民税の申告にも反映される仕組みになっているため、所得税の控除額の変更が、翌年度の住民税額にどのように影響するのかについても、あわせて確認しておくとよいでしょう。詳細な取り扱いは、お住まいの市区町村や税理士に確認することをおすすめします。
よくある質問
2026年分(2027年提出)の確定申告はどちらの制度が適用されますか。
青色申告特別控除の要件見直しは令和9年分(2027年分)以後の所得から適用される見込みのため、2026年分(2027年に提出する分)については、現行の要件が適用されると考えられます。適用時期の詳細は国税庁の公式発表で確認してください。
インボイスに登録していない事業者にも影響はありますか。
2割特例はインボイス発行事業者として登録した免税事業者だった方向けの措置のため、インボイスに登録していない免税事業者には直接の影響はありません。
電子帳簿保存はすぐに始める必要がありますか。
要件を満たす体制を整えるには一定の準備期間が必要になることが多いため、控除額の維持を希望する場合は早めの検討をおすすめします。
簡易課税を選ぶとどんなデメリットがありますか。
簡易課税は事務負担を軽減できる一方、実際の課税仕入れが売上に比べて多い事業年度では、本則課税より納税額が増えてしまう可能性があります。設備投資を予定している年など、仕入れが多くなる見込みがある場合は、本則課税との比較検討が特に重要になります。
2割特例終了後にインボイス登録を取り消すことはできますか。
インボイス発行事業者の登録は、所定の手続きにより取り消すことも可能ですが、取引先との関係やビジネス上の影響を考慮したうえで慎重に判断する必要があります。取消を検討する場合は、税理士に相談することをおすすめします。
会計ソフトを使っていれば電子帳簿保存の要件は自動的に満たせますか。
会計ソフトを利用している場合でも、優良な電子帳簿として認められるためには、訂正・削除履歴の保存や検索機能の確保など、電子帳簿保存法が定める要件を満たす設定・運用が必要です。利用しているソフトが要件に対応しているか、提供会社に確認しておくと安心です。
まとめ
2027年分の確定申告では、青色申告特別控除の要件見直しやインボイス2割特例の終了など、個人事業主の実務に関わる変更がいくつか予定されています。控除額を維持するためのe-Tax対応・電子帳簿保存の準備や、2割特例終了後の課税方式の検討を、今のうちから進めておくことが大切です。制度の詳細は今後変更される可能性もあるため、国税庁など公式情報を随時確認しながら対応しましょう。

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