令和9年度税制改正要望とは?中小企業・個人投資家に関わる主なポイントを解説

スポンサーリンク

2026年8月末、各省庁が財務省に対して「令和9年度(2027年度)税制改正要望」を提出しました。これは翌年度の税制をどう変えてほしいかという各省庁からの要望であり、この時点では決定事項ではありません。ただし、毎年この要望の内容が年末の税制改正大綱、そして翌年の税制改正につながっていくため、中小企業の経営者や個人投資家にとっても早めに方向性を把握しておく価値があります。この記事では、経済産業省・金融庁が公表した要望の中から、特に関係者の多い項目をわかりやすく整理します。

スポンサーリンク

税制改正要望とはどのような制度か

日本の税制改正は、まず各省庁が「税制改正要望」を8月末(例年、翌年度の概算要求と同時期)に財務省へ提出することから始まります。その後、与党の税制調査会などで議論が行われ、12月に「税制改正大綱」としてその年度の税制改正の方向性がまとめられます。大綱の内容は翌年の通常国会に税制改正法案として提出され、可決・成立すれば4月から新しい税制がスタートする、というのが毎年の大まかな流れです。つまり、8月末に公表される「要望」の段階では、あくまで各省庁の「こうしてほしい」という案にすぎず、この通りに決定するとは限りません。

経済産業省の主な税制改正要望

中小企業向け賃上げ促進税制の拡充

経済産業省は、中小企業向け賃上げ促進税制について、適用期限を令和11年度末まで延長するとともに、評価基準を「全雇用者の給与総額の増加率」から「従業員一人あたりの給与支給額の増加率」へと転換することを要望しています。実現すれば、人手不足などで従業員数が減少している企業でも、一人あたりの給与を引き上げることで税制の適用を受けやすくなる可能性があります。

事業承継税制の見直し

事業承継税制についても抜本的な見直しが要望されています。法人版については令和9年9月末までの計画申請・同年12月31日までの贈与や相続、個人版については令和10年9月末までの計画申請・同年12月31日までの贈与や相続を期限として、事業承継を契機に「稼ぐ力」の強化に取り組む企業を支援する制度へと組み替える方向性が示されています。

交際費課税の特例延長など

このほか、中小企業の交際費のうち800万円までを全額損金算入できる特例の令和11年度末までの延長、中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制の拡充、防災・減災投資促進税制の適用期限延長(令和10年度末まで)と対象設備の追加なども要望に盛り込まれています。

金融庁の主な税制改正要望

NISA(少額投資非課税制度)の利便性向上

金融庁は、NISAの非課税保有限度額について、商品を売却した場合の非課税枠の復活が現状では翌年になる点を見直し、同一年中に復活できるようにすることを検討案として示しています。実現すれば、年間の非課税投資枠をより柔軟に使えるようになります。また、つみたて投資枠の対象となるETFの要件についても、市場全体を広くカバーし、すでに市場関係者に浸透している指数に連動する商品まで対象を広げる方向で整備を求めています。

生命保険料控除の拡充措置の恒久化

子育て世帯を対象とした生命保険料控除の拡充措置は、現行制度では令和8年分・令和9年分の時限措置とされています。金融庁の要望では、この措置を恒久化することが盛り込まれており、実現すれば子育て世帯にとって継続的な税制上のメリットとなります。

金融所得課税の一体化

このほか、デリバティブ取引と預貯金等の損益通算の範囲を広げる「金融所得課税の一体化」も、資産運用立国の推進策として要望されています。個人投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境の整備を目的としたものです。

分野主な要望項目対象となりうる方
中小企業支援賃上げ促進税制の評価基準見直し・延長中小企業の経営者
事業承継事業承継税制の抜本見直し事業承継を検討する企業
資産形成NISA非課税枠の同年中復活個人投資家
子育て支援生命保険料控除拡充の恒久化子育て世帯

税理士・中小企業経営者が今の時点で意識しておきたいこと

税制改正要望はあくまで各省庁の希望であり、財務省の査定や与党税制調査会での議論を経て、内容が縮小されたり見送られたりすることも珍しくありません。この段階の情報をもとに資金計画や投資判断を確定させてしまうと、実際の制度と食い違うリスクがあります。現時点では「こうした方向性の議論が始まっている」という情報として捉え、正式な内容は12月に公表される税制改正大綱、さらに翌年の税制改正法の成立を待って確認することが重要です。顧問税理士がいる場合は、大綱が公表されたタイミングで自社に関係する変更点を確認してもらうとよいでしょう。

Q. 税制改正要望に書かれている内容は必ず実現しますか?

A. いいえ、必ず実現するとは限りません。要望はあくまで各省庁からの提案であり、財務省の査定や与党の税制調査会での議論を経て、内容が変更されたり見送られたりすることがあります。

Q. 正式な内容はいつ・どこで確認できますか?

A. 例年12月に与党が公表する「税制改正大綱」で改正の方向性が示され、翌年の通常国会で法案が可決・成立すると正式に決定します。財務省や各省庁の公式サイトで確認できます。

Q. 個人事業主やフリーランスにも関係がありますか?

A. はい。中小企業向けの税制の多くは個人事業主も対象に含まれる場合があります。また、NISAや生命保険料控除など個人向けの要望項目も含まれているため、確定した際には自身に関係するか確認することをおすすめします。

令和9年度税制改正要望では、中小企業の賃上げ・事業承継を後押しする項目や、NISA・生命保険料控除など個人の資産形成・家計に関わる項目が示されました。ただし現時点ではあくまで要望段階であることを踏まえ、12月の税制改正大綱の公表を待って、自身や自社に関係する変更点を確認するようにしましょう。なお、1年前に決定した令和8年度税制改正の内容については、別記事「【令和8年度税制改正】相続税・贈与税はどう変わる?主な変更点をわかりやすく解説」もあわせてご参照ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました