投資信託を保有している人のもとには、年に1回、販売会社から「トータルリターン通知」という書類が送られてきます。これは、これまでに投資した金額の累計と、現在の評価額を比較して、実際にどれだけの運用成果が出ているかを示す通知です。
トータルリターン通知が導入された背景
投資信託の運用状況は、分配金の額だけでは実態がわかりにくいという指摘がありました。分配金が多く出ていても、その分基準価額が下がっていれば、実質的にはあまり利益が出ていない場合もあります。こうした状況をわかりやすく伝えるため、日本証券業協会等の自主規制ルールにもとづき、トータルリターン通知制度が導入されています。
分配金と基準価額の関係
投資信託の分配金は、必ずしも運用によって得られた利益だけから支払われるとは限らず、元本の一部を取り崩して支払われる場合もあります。この場合、分配金を受け取った分だけ基準価額が下がることになるため、分配金の受取額が多いことが、そのまま高い運用成績を意味するわけではありません。トータルリターン通知は、こうした分配金の性質にかかわらず、投資額全体に対する損益を把握できるようにする狙いがあります。
通知に記載される主な項目
通知には、これまでに買い付けた金額の累計、受け取った分配金の累計、現在の評価金額、そしてこれらを合算した「トータルリターン(累計損益)」が記載されています。累計買付金額と評価金額・分配金の合計を比較することで、これまでの投資全体でプラスになっているのか、マイナスになっているのかを一目で確認できる仕組みです。
毎月の運用報告書との違い
投資信託については、運用会社が作成する運用報告書やレポートが別途交付される場合もありますが、これらは主にファンド全体の運用状況を説明するものです。これに対してトータルリターン通知は、あくまで自分自身が投じた資金についての損益を示すものであり、個人の投資成果を確認するという点で性質が異なります。両方をあわせて確認することで、ファンド全体の状況と自分自身の投資成果の両面を把握しやすくなります。
通知の活用方法
トータルリターン通知は年1回のタイミングで届くため、家計の資産状況を定期的に見直すきっかけとして活用するとよいでしょう。想定していたリターンと大きく乖離している場合は、当初の投資方針を見直す必要がないか検討する材料にもなります。
通知を確認する際の注意点
トータルリターン通知はあくまで通知が発行された時点での評価額をもとにした数値であり、その後の基準価額の変動によって実際の損益は変わっていきます。また、複数回に分けて買い増しをしている場合、通知に記載される累計買付金額には過去の買付分もすべて含まれるため、直近の値動きだけでなく、これまでの投資全体を通じた成果として捉える視点を持つことが大切です。
複数の投資信託を保有している場合の見方
銘柄ごとの通知を横並びで確認する
複数の投資信託を保有している場合、トータルリターン通知は銘柄ごとに送付されるのが一般的です。ある銘柄はプラス、別の銘柄はマイナスというように成績にばらつきが出ることも珍しくないため、一つの通知だけで一喜一憂せず、保有している商品全体を横並びで確認し、資産全体としてのバランスを把握することが望まれます。
積立投資における受け止め方
毎月一定額を積み立てている場合、直近に買い付けた分は評価損益がまだ小さく、早い時期に買い付けた分ほど損益の影響が蓄積されていきます。トータルリターンの数値は、こうした買付時期の異なる資金がまとめて反映された結果であるため、単月の値動きに過度に反応せず、積立期間全体を通じた傾向として捉える視点が大切です。
通知が届いたときに見直したいこと
トータルリターン通知を受け取ったタイミングは、当初設定した積立額や投資対象が今の自分の状況に合っているかを見直す良い機会でもあります。収入や家計の状況が変わっている場合には、積立額を調整したり、投資対象の配分を見直したりすることも検討に値します。通知を受け取って終わりにせず、次の行動につなげる意識を持つことが、資産形成を続けていくうえで役立ちます。
通知の保管方法
トータルリターン通知は紙で郵送される場合と、オンライン上のマイページ等で電子的に交付される場合があります。過去の通知と見比べることで運用の推移を振り返りやすくなるため、紙・電子いずれの形式であっても、一定期間分をまとめて保管しておくと、資産全体の変化を継続的に把握しやすくなります。
家族と情報を共有する意義
資産運用の状況を自分ひとりだけで把握していると、万一の際に家族が状況を確認できず困ってしまうことがあります。トータルリターン通知が届くタイミングを機に、保有している投資信託の一覧や、おおまかな運用状況を家族と共有しておくことも、家計全体の見える化という観点から有効な取り組みといえます。
よくある質問
Q. すべての投資信託でトータルリターン通知が届くか。
主要な販売会社では原則として対象となる投資信託についてこの通知を行っていますが、通知の対象範囲や様式は販売会社によって異なる場合があります。
Q. NISA口座で保有している投資信託も通知の対象になるか。
NISA口座で保有している投資信託についても、課税口座と同様にトータルリターン通知が送付されるのが一般的です。ただし、税金の有無にかかわらず運用成績を確認できる点は共通しています。
Q. トータルリターンがマイナスの場合、すぐに売却すべきか。
一概には言えません。長期の積立投資では、一時的に評価額が投資元本を下回る時期が生じることも珍しくないため、短期的な結果だけで判断せず、当初の投資方針や運用期間を踏まえて検討することが望まれます。
まとめ
トータルリターン通知は、投資信託の実質的な運用成果を把握するための重要な資料です。分配金の額だけでは見えにくい投資全体の損益を、年1回のタイミングで確認できる貴重な機会といえます。運用報告書などほかの資料とあわせて活用しながら、定期的に自分の資産運用の状況を見直す習慣をつけるとよいでしょう。

コメント