「就業規則のひな形を生成AIに作らせれば、社労士に依頼するより早いのでは」と考える経営者や人事担当者が増えています。たしかに条文のたたき台を短時間で用意できる点は便利ですが、そのまま使うにはいくつかの落とし穴があります。
就業規則の法的な位置づけ
労働基準法89条により、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。就業規則は単なる社内文書ではなく、労働条件や職場規律に関する重要な法的効力を持つ文書であり、内容が労働基準法等の強行法規に反する場合、その部分は無効となります。
生成AIで作成したたたき台のリスク
| リスクの内容 | 具体例 |
| 最新の法改正が反映されていない | 育児・介護休業法の改正内容など、生成AIの学習時点以降の改正が抜け落ちる可能性 |
| 自社の実態に合わない条文 | 一般的なひな形をそのまま使うことで、自社の勤務体系や給与制度と矛盾する内容になる |
| 労働基準法に抵触する条文 | 割増賃金の計算方法など、法定基準を下回る内容が紛れ込むリスク |
生成AIは、一般的で汎用的な就業規則のひな形を作ることは得意ですが、自社固有の勤務体系(変形労働時間制の採用状況、固定残業代の有無等)や、直近の法改正を正確に反映した内容を作ることは必ずしも保証されません。たたき台としての効率化と、内容の正確性の確保は分けて考える必要があります。
社労士によるチェックが重要な理由
就業規則は、いったん届け出て運用を始めると、後から不利益に変更することが法的に難しくなる場合があります(労働契約法上の不利益変更の制限)。生成AIで作成したたたき台であっても、実際に運用を始める前に、社会保険労務士など専門家によるチェックを受け、自社の実態や最新の法改正に照らして内容を確認するプロセスを省略しないことが重要です。
よくある質問
Q. 生成AIで作成した就業規則をそのまま労働基準監督署に届け出てもよいか。
A. 内容に法令違反や自社の実態との齟齬がないかを事前に確認せずに届け出ることは避けるべきです。専門家によるチェックを経てから届け出ることが望まれます。
Q. 小規模な会社(10人未満)でも就業規則を作る意味はあるか。
A. 作成・届出の法的義務はありませんが、労務トラブルの予防や、助成金の申請要件になる場合もあるため、任意で整備しておく会社も多くあります。
Q. 就業規則の変更にも生成AIは使えるか。
A. 変更点の洗い出しや条文案の作成補助として使うことはできますが、変更内容が労働条件の不利益変更に該当しないか、手続き上必要な労働者代表の意見聴取が済んでいるかなど、法的な要件の確認は専門家に相談することが望まれます。
生成AIを使う場合の現実的な活用法
就業規則をゼロから作る際に、条文の骨子や一般的な構成を短時間で洗い出す用途であれば、生成AIは有用なスタート地点になります。作成したたたき台を社労士に渡し、自社の実態や最新の法改正を踏まえた修正・確認をしてもらうという役割分担にすることで、効率化と正確性の両立がしやすくなります。
まとめ
就業規則のたたき台作成に生成AIを活用する場合も、最終的な内容の確認は社会保険労務士に依頼し、自社の実態と最新の法改正に照らして正確性を確保することが欠かせません。労働条件通知書の作成についても、別記事「生成AIで求人票・労働条件通知書の下書きを作る、記載事項の抜け漏れを防ぐチェックポイント」もあわせてご確認ください。

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