繁閑の差が大きい業種でよく利用される「変形労働時間制」。フレックスタイム制と混同されがちですが、仕組みは異なります。この記事では、代表的な1年単位と1ヶ月単位の変形労働時間制の違いを整理します。
変形労働時間制とはどのような制度か
変形労働時間制は、一定期間を平均して法定労働時間(週40時間)以内に収まるように、特定の日や週の労働時間を法定労働時間を超えて設定できる制度です。繁忙期には労働時間を長く、閑散期には短く設定することで、無駄な残業代の発生を抑えつつ、業務量に応じた効率的な労働時間配分ができます。
1ヶ月単位と1年単位の違い
| 項目 | 1ヶ月単位 | 1年単位 |
| 対象期間 | 1ヶ月以内 | 1ヶ月超1年以内 |
| 導入方法 | 労使協定または就業規則 | 労使協定(届出必須) |
| 向いている業種の例 | 月末月初が忙しい経理部門、月内でシフトの繁閑がある業種 | 夏季・年末など季節による繁閑差が大きい業種 |
| 労働日数の上限(1年単位) | - | 原則として年間280日が上限 |
フレックスタイム制との違い
変形労働時間制は、あらかじめ会社が各日・各週の労働時間を具体的に定めておく制度であるのに対し、フレックスタイム制は労働者自身が始業・終業の時刻を決定できる制度です。「誰が労働時間を決めるか」という点が大きな違いといえます。
導入時の注意点
変形労働時間制を導入するには、対象期間における各日・各週の労働時間をあらかじめ具体的に特定しておく必要があります。特定した労働時間を超えて働かせた場合は、通常どおり時間外労働として割増賃金の支払いが必要になるため、シフト表の作成・管理を適切に行うことが重要です。
就業規則・労使協定の見直しタイミング
変形労働時間制は、事業の繁閑パターンが変化した場合には、あらかじめ定めた労働時間の特定内容を見直す必要があります。制度を導入したまま実態と合わなくなったシフトを放置すると、労働時間管理が形骸化し、未払い残業代のリスクにつながるため、定期的に運用実態を点検することが望まれます。
労使協定の届出先
1年単位の変形労働時間制を導入する場合、締結した労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。届出を怠ると、変形労働時間制自体が無効と判断され、通常の法定労働時間にもとづいて残業代を計算し直さなければならなくなるリスクがあるため、届出手続きを確実に行うことが重要です。
年次有給休暇の付与への影響
変形労働時間制のもとでも、年次有給休暇の付与日数や取得時の賃金計算の考え方は通常の労働者と変わりません。ただし、労働日・所定労働時間があらかじめ特定されているため、有給休暇を取得した日の賃金計算にあたっては、その日の所定労働時間を正確に把握しておく必要があります。
季節労働者への適用
1年単位の変形労働時間制は、夏季や年末年始など特定の時期に業務が集中する業種でよく活用されています。旅館業や観光業などでは、繁忙期に労働時間を長く設定し、閑散期に短く設定することで、年間を通じた労働時間のバランスを取りながら、無駄な人件費の発生を抑える工夫がなされています。
育児・介護中の労働者への配慮
変形労働時間制を導入する場合でも、育児や介護を行う労働者については、労働基準法上、必要な時間を確保できるよう配慮する義務が事業主に課されています。特定した労働時間が育児・介護の都合と合わない場合は、個別に配慮した勤務時間の調整を行うなど、柔軟な運用が求められます。
年少者・妊産婦への適用制限
満18歳未満の年少者や、請求した妊産婦については、1年単位の変形労働時間制の対象から除外される、あるいは適用が制限される場合があります。多様な人材が働く職場では、変形労働時間制の対象者を検討する際に、こうした年齢・状況に応じた制限も踏まえておく必要があります。
Q. 変形労働時間制を導入すれば残業代を払わなくてよいのですか?
A. いいえ。あらかじめ定めた労働時間を超えて働かせた場合は、通常どおり残業代(割増賃金)の支払いが必要です。
Q. 1年単位の変形労働時間制はどの業種でも導入できますか?
A. 業種の制限はありませんが、労働日数の上限(原則年280日)や連続労働日数の制限など、細かいルールがあるため、導入前に要件を確認する必要があります。
Q. 1年単位の変形労働時間制は途中で変更できますか?
A. 対象期間の途中で労働時間の特定内容を変更することは、原則として認められていません。変更が必要な場合は労使協定を締結し直す必要があります。
Q. 労使協定の届出を忘れるとどうなりますか?
A. 届出をしていない場合、変形労働時間制自体が無効と判断されるおそれがあり、通常の法定労働時間にもとづいて残業代を再計算する必要が生じる可能性があります。
変形労働時間制は、繁閑差に応じて労働時間を配分できる制度で、フレックスタイム制とは仕組みが異なります。固定残業代制度については、別記事「固定残業代(みなし残業)制度とは?導入の注意点を解説」もあわせてご参照ください。

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