会社員は個人事業主のように経費を計上できないと思われがちですが、一定の要件を満たせば「特定支出控除」という制度を使って、自己負担した費用の一部を所得から控除できます。この記事ではその仕組みを整理します。
特定支出控除とはどのような制度か
特定支出控除は、給与所得者が職務に関連する一定の支出(特定支出)を自己負担した場合に、その年の特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える部分について、確定申告により追加で控除を受けられる制度です。
対象となる特定支出の種類
| 特定支出の種類 | 内容 |
| 通勤費 | 通常必要な通勤のための支出 |
| 職務上の旅費 | 勤務地を離れて行う職務に必要な旅行の費用 |
| 転居費 | 転勤に伴う転居のための支出 |
| 研修費 | 職務に直接必要な技術・知識の習得のための研修費用 |
| 資格取得費 | 職務に必要な資格を取得するための費用 |
| 帰宅旅費 | 単身赴任者が自宅との間を往復する旅費 |
| 勤務必要経費(上限65万円) | 図書費、勤務場所での着用が必要な衣服費、得意先等への接待交際費等 |
控除額の計算方法と手続き
その年の特定支出の合計額が、給与所得控除額の2分の1に相当する金額を超える場合、その超えた部分の金額を給与所得の金額から控除できます。適用を受けるには確定申告が必要で、特定支出に関する明細書に加え、給与の支払者やキャリアコンサルタントによる証明書、支出を証明する領収書等の添付が求められます。
実際に活用されるケース
資格取得費やキャリアコンサルタントによる証明が必要な項目もあることから、実際に利用するハードルはやや高いとされていますが、転勤や単身赴任にともなう費用負担が大きい方、職務上必須の資格取得のために多額の費用を支出した方などにとっては、検討する価値がある制度です。
証明書類の準備
特定支出控除の適用には、給与の支払者が発行する「特定支出に関する証明書」が必要になる項目が多く、資格取得費など一部の支出ではキャリアコンサルタントによる証明書が必要な場合もあります。制度の利用を検討する場合は、支出が発生した時点で証明書の取得方法を勤務先の人事担当部門に確認しておくとスムーズです。
実際の利用状況
特定支出控除は制度として存在するものの、要件を満たす支出額が給与所得控除額の2分の1を超えるケースは限られるため、実際に利用する給与所得者の数は多くないとされています。それでも、転勤・単身赴任が多い職種や、資格取得を頻繁に行う職種の方にとっては、活用を検討する価値のある制度です。
通勤費との違い
特定支出控除の対象となる通勤費は、通常の通勤手当として非課税限度額の範囲で支給される部分とは別に、自己負担した通勤のための支出を指します。混同しやすい制度のため、対象となる支出の範囲を正確に理解したうえで申告することが必要です。
確定申告書への記載方法
特定支出控除の適用を受ける場合、確定申告書に給与所得の金額を計算する明細として、特定支出控除額を差し引いた金額を記載します。通常の給与所得者の確定申告とは異なる記載が必要になるため、初めて適用を受ける場合は、国税庁が公表している記載例を確認しながら進めることが望まれます。
特定支出の範囲に関する誤解
特定支出控除の対象となる研修費や資格取得費は、あくまで「職務に直接必要」と認められるものに限られ、自己啓発目的の学習全般が対象になるわけではありません。適用を検討する際は、その支出が自分の担当業務とどのように直接関連しているかを、給与の支払者に説明できるよう整理しておくことが重要です。
給与所得控除との関係
特定支出控除は、通常の給与所得控除に上乗せする形で適用される制度です。給与所得控除はすべての給与所得者に適用される概算控除であるのに対し、特定支出控除は実際にかかった費用が一定額を超えた場合にのみ適用される点で性質が異なります。
Q. 特定支出控除は年末調整で適用できますか?
A. いいえ。特定支出控除の適用を受けるには、確定申告を行う必要があります。
Q. 資格取得費であれば何でも対象になりますか?
A. いいえ。「職務に直接必要な資格」として認められるものに限られ、給与支払者の証明が必要です。
Q. 特定支出控除の対象となる資格取得費に上限はありますか?
A. 資格取得費自体に一律の上限額は定められていませんが、特定支出全体で給与所得控除額の2分の1を超える部分のみが控除対象となります。
Q. 特定支出控除を利用している人はどのくらいいますか?
A. 要件を満たす支出額が一定水準を超える必要があるため、実際に利用する給与所得者は限定的とされていますが、該当する支出がある場合は検討する価値があります。
特定支出控除は、要件を満たした給与所得者が申告により追加の控除を受けられる制度です。年末調整の基本書類については、別記事「扶養控除等申告書の書き方|記入例とマイナンバー記載の注意点」もあわせてご参照ください。

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