社会保険労務士試験は、合格率が一桁台にとどまることが多い難関資格として知られています。厚生労働省が公表している直近5年分(第53回〜第57回)のデータを見ると、受験者数は増加傾向にある一方、合格率は5%台から7%台の間で毎年上下しています。本稿では、公式発表をもとにした受験者数・合格率の推移と、社労士試験特有の合格基準の仕組み、これから受験を検討する人が押さえておきたいポイントを整理します。
社会保険労務士試験の受験者数・合格率の推移(第53回〜第57回)
厚生労働省が公表している社会保険労務士試験結果によると、直近5年間の受験者数・合格者数・合格率は以下の通りです。
| 回数(年度) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第53回(令和3年度) | 37,306人 | 2,937人 | 7.9% |
| 第54回(令和4年度) | 40,633人 | 2,134人 | 5.3% |
| 第55回(令和5年度) | 42,741人 | 2,720人 | 6.4% |
| 第56回(令和6年度) | 43,174人 | 2,974人 | 6.9% |
| 第57回(令和7年度) | 43,421人 | 2,376人 | 5.5% |
このデータは厚生労働省が、試験実施団体である全国社会保険労務士会連合会の試験結果として公表しているものです(確認日:2026年9月)。第57回(令和7年度)が本稿執筆時点で確認できる最新の結果です。
データから読み取れる傾向
受験者数は緩やかな増加傾向
第53回の37,306人から第57回の43,421人へと、受験者数は5年間で6,000人以上増加しています。社会保険労務士は人事労務分野への関心の高まりを背景に注目度が上がっている資格の一つとされており、受験者数の増加もその一端を反映していると考えられます。
合格率は5%台〜7%台で毎年変動
合格率は最も低い第54回の5.3%から最も高い第56回の6.9%まで、年度によって差があります。社労士試験は選択式試験に科目ごとの合格基準点が設けられており、1科目でも基準点に届かないと不合格になる仕組みがあります。この基準点は年度ごとの受験者全体の得点状況等をもとに補正される場合があり、合格率の変動には出題内容や受験生全体の得点状況が影響していると考えられますが、具体的な理由は試験実施団体から詳細には公表されていません。
試験の出題形式
社会保険労務士試験は、午前に選択式試験、午後に択一式試験が実施される1日完結型の試験です。選択式は空欄補充形式でマークする方式、択一式は5肢択一のマークシート方式で出題されます。記述式の問題はなく、いずれもマークシートによる解答形式である点が、税理士試験や公認会計士試験など記述式を含む他の資格試験との大きな違いです。
科目免除制度の存在
社会保険労務士試験には、公務員として一定期間労働社会保険関係の業務に従事した人などを対象とした科目免除制度があります。厚生労働省が公表した第55回(令和5年度)の結果では、合格者2,720人のうち科目免除者は834人含まれており、全ての受験生が同じ科目数・同じ基準点で競っているわけではない点にも留意が必要です。自分が免除制度の対象になるかどうかは、受験を検討する早い段階で全国社会保険労務士会連合会の公式案内を確認しておくとよいでしょう。
難易度の実態と学習のポイント
科目基準点による「一発アウト」のリスク
社労士試験の合格率が低い最大の要因は、総得点の基準だけでなく、選択式・択一式それぞれの科目ごとに基準点が設けられている点にあります。総合得点で合格ラインに達していても、特定の科目で基準点を下回ると不合格となるため、苦手科目を作らない学習が欠かせません。過去5年の合格率が5%台から7%台で推移していることからも、得意科目だけを伸ばす学習では合格が難しい試験であることがうかがえます。
学習計画への活かし方
社会人受験生が社労士試験に挑む場合、労働基準法から社会保険各法まで10科目前後にわたる出題範囲をまんべんなく学習する時間の確保が課題になります。過去5年分の合格率が大きく変わらない範囲で推移していることを踏まえると、「今年は易しいはずだ」といった見立てに頼らず、毎年一定の難易度を前提に、全科目で基準点を安定して超える実力を身につける学習計画を立てることが現実的です。特に、得点源にしにくい科目ほど早い時期から繰り返し学習し、直前期に苦手科目の基準点割れを起こさない状態に仕上げておくことが重要になります。
直前期の過ごし方も合否を分ける
社労士試験は1日で選択式・択一式の両方を受験するため、長時間にわたって高い集中力を維持する体力面の準備も欠かせません。特に択一式は午後の長時間にわたる試験であり、直前期には知識の詰め込みだけでなく、本試験と同じ時間配分で過去問を解く練習を重ね、時間切れによる失点を防ぐ対策も重要になります。
受験申込者数と受験者数の差にも注目
第56回(令和6年度)のデータでは、受験申込者数53,707人に対して実際の受験者数は43,174人で、申込者の2割近くが受験に至っていません。社労士試験は仕事を続けながら受験する社会人が多いことも背景にあると考えられ、学習計画を立てる際は、試験当日まで学習を継続できるペース配分自体も合否を左右する要素として意識しておく必要があります。
最新データを確認する際の注意点
社会保険労務士試験は毎年8月下旬に実施され、合格発表は例年10月上旬に厚生労働省から発表されます。本稿で紹介した数値は執筆時点(2026年9月)で確認できる第57回(令和7年度)までのものであり、次回以降の結果はまだ公表されていません。受験を検討する際は、厚生労働省または全国社会保険労務士会連合会の公式発表で最新の受験者数・合格率を必ず確認してください。
よくある質問
Q. 社会保険労務士試験の合格率はなぜ低いのか。
出題範囲が労働基準法から社会保険各法まで幅広く、さらに選択式・択一式のそれぞれで科目ごとの基準点をすべてクリアする必要があるためと考えられています。総合点では合格ラインに達していても、1科目の基準点割れで不合格になるケースが多いことが、合格率の低さにつながっているという見方があります。
Q. 社労士試験の難易度は年々上がっているのか。
厚生労働省が公表している直近5年間のデータでは、合格率は5.3%から6.9%の範囲で上下しており、一方向に上昇し続けているとは言えません。年度ごとの変動はありますが、公式に「難化した」と説明されているわけではないため、複数年のデータで傾向を確認することが大切です。
Q. 受験者数が増えているのはなぜか。
厚生労働省の発表では受験者数が増加している事実は確認できますが、その要因について公式な説明はありません。人事労務分野への関心の高まりなどが背景にあるという見方もありますが、断定はできません。
Q. 科目免除制度を使えば必ず合格しやすくなるのか。
科目免除は受験する科目数が減るだけであり、免除された科目以外の基準点は他の受験生と同じ基準で判定されます。厚生労働省の公表データにも、免除者だけの合格率を優遇するような記載はないため、免除制度の利用が合格率を直接高めるとは言い切れません。
受験資格の確認も忘れずに
社会保険労務士試験は、行政書士試験とは異なり受験資格が定められており、大学等での一定単位の修得や、実務経験、他の国家資格保有など複数のルートのいずれかを満たす必要があります。これから受験を検討する場合は、学習計画を立てる前に、全国社会保険労務士会連合会の公式サイトで自分がどの受験資格ルートに該当するかを確認しておくことをおすすめします。
まとめ
社会保険労務士試験は、直近5年間で受験者数が増加する一方、合格率は5%台から7%台の間で変動を繰り返しています。科目ごとの基準点をすべてクリアする必要がある試験の特性上、苦手科目を作らない学習が合格への近道です。最新の公式データを確認しながら、長期的な視点で学習計画を立てることをおすすめします。社会人受験生の場合は特に、仕事と学習の両立を前提としたペース配分を早い段階から意識し、直前期に慌てて苦手科目を詰め込むことがないよう計画的に準備を進めることが大切です。

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