アルバイトをしている学生の方にとって、年末調整の時期に知っておきたいのが「勤労学生控除」です。名前は聞いたことがあっても、自分が使えるのか、どのように申告するのかまでは知らないという方も多いのではないでしょうか。
しかも令和8年分は、税制改正により勤労学生控除の所得要件が引き上げられています。この記事では、国税庁のタックスアンサーと「令和8年分 年末調整のしかた」をもとに、勤労学生控除のしくみと令和8年分の変更点、年末調整での申告方法をまとめます。学生の方ご本人はもちろん、学生アルバイトを雇用している事業者の給与担当の方にも読んでいただきたい内容です。
勤労学生控除とは?
勤労学生控除は、働きながら学校に通う学生が受けられる所得控除で、控除額は所得税で27万円です。基礎控除などに上乗せして所得から差し引けるため、その分だけ所得税がかかりにくくなります。
アルバイト収入がある程度ある学生の場合、基礎控除と給与所得控除だけでは所得税がかかってしまうことがあります。そのようなときに勤労学生控除を使えば、税金がゼロになったり、源泉徴収された税金が戻ってきたりするケースがあります。
勤労学生控除を受けるための3つの要件
その年の12月31日の現況で、次の3つをすべて満たす人が対象です。
| 要件 | 内容 |
| (1)勤労による所得 | 給与所得など、自分が働いて得た所得があること |
| (2)所得の金額 | 合計所得金額が一定額以下で、かつ(1)の勤労による所得以外の所得が10万円以下であること |
| (3)学生であること | 特定の学校の学生・生徒であること |
(2)の「勤労以外の所得が10万円以下」という要件も見落としがちです。たとえば株式や投資信託などで利益が出ている場合は、その所得も含めて判定されるため注意してください。
令和8年分は所得要件が89万円以下に引き上げ
令和8年度の税制改正で、勤労学生の所得要件が引き上げられました。改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用されます。
| 区分 | 改正前(令和7年分) | 改正後(令和8年分) |
| 合計所得金額 | 85万円以下 | 89万円以下 |
| 給与だけの場合の収入金額の目安 | 150万円以下 | 163万円以下 |
給与だけの場合の163万円という目安は、令和8・9年分の給与所得控除をもとに国税庁が示している金額です。令和8・9年分は給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられているため、給与収入163万円−給与所得控除74万円=給与所得89万円、という計算になります。令和10年分以後の給与収入の目安は今回の国税庁資料には示されていないため、その年の資料で改めて確認してください。
なお、特定支出控除の適用がある場合は、この目安の金額とは異なります。
対象になる学校の範囲
対象になる学校は、大きく分けて次の3つです。
・学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
・国、地方公共団体、学校法人などが設置した専修学校・各種学校のうち、一定の課程を履修させるもの
・職業能力開発促進法の認定職業訓練を行う職業訓練法人で、一定の課程を履修させるもの
専門学校や各種学校の場合は、修業期間や年間の授業時間数などの要件を満たす課程に限られます。たとえば専修学校の高等課程・専門課程であれば、修業期間が1年以上で、1年の授業時間数が800時間以上(夜間などの場合は450時間以上で、かつ修業期間を通じて800時間以上)といった要件があります。ご自身の学校が当てはまるか分からないときは、学校の窓口で確認するのが確実です。
年末調整での申告のしかた
アルバイト先で年末調整を受ける場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に勤労学生控除に関する事項を記入して、勤務先に提出します。
専修学校・各種学校・職業訓練法人の生徒の場合は、学校長などから必要な証明書の交付を受けて、申告書に添付するか、提出の際に提示する必要があります。大学や高校の学生であれば、この証明書は不要です。
年末調整で勤労学生控除を受けていれば、この控除のために改めて確定申告をする必要はありません。反対に、年末調整で申告し忘れた場合や、アルバイト先で年末調整を受けていない場合は、確定申告で勤労学生控除を受けることができます。
実務でもここの申請漏れが多いので要注意です!
給与担当の方への注意点としては、令和8年11月までの給与の源泉徴収事務は変わらず、12月の年末調整で改正後の基礎控除などを使って1年分の税額を計算し、精算する流れになっていることです。学生アルバイトの方から扶養控除等申告書を回収する際に、勤労学生欄の記載もあわせて確認しておきましょう。
親の扶養控除・特定親族特別控除との関係
学生がアルバイトで収入を得ると気になるのが、親の扶養から外れるかどうかです。勤労学生控除は「学生本人」の控除で、親の扶養控除とは別の制度なので、分けて考えましょう。
令和8年分では、親が扶養控除を受けられる扶養親族の所得要件は合計所得金額62万円以下(給与だけなら収入136万円以下)となっています。19歳以上23歳未満の子(特定扶養親族)であれば、親の扶養控除額は63万円です。
さらに、19歳以上23歳未満の子の所得が62万円を超えても123万円以下(給与だけなら収入197万円以下)であれば、親は「特定親族特別控除」を受けられます。控除額は子の所得に応じて段階的に減っていきます。
| 子の合計所得金額 | 給与だけの場合の収入金額 | 親の控除額 |
| 62万円超85万円以下 | 136万円超159万円以下 | 63万円 |
| 85万円超90万円以下 | 159万円超164万円以下 | 61万円 |
| 90万円超95万円以下 | 164万円超169万円以下 | 51万円 |
| 95万円超100万円以下 | 169万円超174万円以下 | 41万円 |
| 100万円超105万円以下 | 174万円超179万円以下 | 31万円 |
| 105万円超110万円以下 | 179万円超184万円以下 | 21万円 |
| 110万円超115万円以下 | 184万円超189万円以下 | 11万円 |
| 115万円超120万円以下 | 189万円超194万円以下 | 6万円 |
| 120万円超123万円以下 | 194万円超197万円以下 | 3万円 |
たとえば給与収入160万円の大学生であれば、本人は勤労学生控除を受けられる範囲(163万円以下)で、親は扶養控除ではなく特定親族特別控除(61万円)を受ける形になります。本人と親の両方で手続きが必要になるため、家族で収入の見込みを共有しておくと安心です。
なお、ここで紹介したのは所得税の取扱いです。住民税や社会保険(健康保険の扶養など)は基準が異なるため、それぞれお住まいの市区町村や加入している健康保険で確認してください。
よくある質問
Q. 令和8年分の勤労学生控除はいくらまで稼げば受けられるのか。
合計所得金額89万円以下で、かつ勤労以外の所得が10万円以下であることが要件です。収入が給与だけであれば、令和8年分は給与収入163万円以下が目安になります。
Q. 勤労学生控除を受けると親の扶養から外れるのか。
勤労学生控除は学生本人の控除のため、それ自体で親の扶養が決まるわけではありません。親の扶養控除は子の合計所得金額62万円以下(給与だけなら収入136万円以下)が要件で、それを超えても123万円以下であれば、親は特定親族特別控除を受けられる場合があります。
Q. 専門学校の学生でも勤労学生控除を受けられるのか。
一定の要件を満たす課程の専修学校・各種学校であれば受けられます。その場合は、学校長などから証明書の交付を受け、申告書に添付するか提示する必要があります。
Q. 年末調整で申告し忘れた場合はどうすればよいのか。
確定申告書に勤労学生控除に関する事項を記載して提出すれば、控除を受けられます。
Q. 勤労学生控除の控除額はいくらか。
所得税の控除額は27万円です。
まとめ
勤労学生控除は、働きながら学ぶ学生が受けられる所得税27万円の控除です。令和8年分は所得要件が合計所得金額89万円以下に引き上げられ、給与だけであれば収入163万円以下が目安になりました。
年末調整であれば、扶養控除等申告書に記入して勤務先に提出するだけです。専門学校などの場合は証明書が必要になります。親の扶養控除・特定親族特別控除とは別の制度なので、本人と親でそれぞれ手続きを忘れないようにしましょう。

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