日商簿記1級は、日商簿記検定の最上位に位置する資格で、税理士試験の受験資格や、会計・経理職でのキャリアアップに関わる本格的な会計知識が問われます。結論から言うと、直近5回の合格率は10.5%~21.2%と回によって幅があり、単年度・単回の数字だけで難易度を判断しにくい試験です。この記事では日本商工会議所が公表している公式データをもとに、受験者数と合格率の推移を確認し、難関資格と言われる理由を整理します。
日商簿記1級の受験者数・合格率の推移(直近5回分)
日商簿記1級は年2回(6月・11月)実施される統一試験(ペーパー方式)のみで実施されており、2級・3級のようなネット試験(CBT方式)は実施されていません。以下は日本商工会議所が公表している直近5回分のデータです(2026年9月時点で確認できる最新の公式発表)。
| 実施回(実施年月) | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第173回(2026年6月) | 9,806名 | 2,076名 | 21.2% |
| 第171回(2025年11月) | 10,524名 | 1,604名 | 15.2% |
| 第170回(2025年6月) | 9,610名 | 1,343名 | 14.0% |
| 第168回(2024年11月) | 10,420名 | 1,572名 | 15.1% |
| 第167回(2024年6月) | 9,457名 | 992名 | 10.5% |
日商簿記1級には「70点以上で合格、ただし1科目でも40点未満があると不合格」という得点基準が設けられており、単純に受験者の実力だけでなく、その回の出題内容によって合格率が上下しやすい試験だと言えます。
データから読み取れる傾向
合格率は回によって大きく変動する
直近5回のデータを見ると、2024年6月の10.5%から2025年6月の14.0%、2026年6月には21.2%まで上昇しており、単年度・単回のデータだけで「易化した」「難化した」と判断することは適切ではありません。日商簿記1級は出題範囲が広く、その回でどの論点が重点的に出題されたかによって合格率が上下しやすいと考えられます。学習計画を立てる際は、直近1回の合格率だけでなく、複数回分の平均的な水準を目安にする方が実態に近いといえるでしょう。
2級・3級とは異なり、ネット試験(CBT方式)が実施されていない
日商簿記2級・3級では2020年12月からネット試験(CBT方式)が導入されていますが、2026年9月時点で1級にはネット試験は導入されておらず、年2回の統一試験のみとなっています。1級は記述式・計算式の問題が多く、答案の採点に一定の時間を要することも、ネット試験化が進んでいない理由の一つとして考えられますが、これは一般的な見方であり、日本商工会議所が公式にその理由を説明しているものではありません。受験機会が年2回に限られる分、6月・11月それぞれの試験に照準を合わせた計画的な学習が求められます。
受験者数はやや減少傾向
実受験者数は、直近5回では9,000名台から10,000名台半ばの間で推移しています。日本商工会議所が公表するより長期の推移を見ると、2000年代には1回あたり13,000~17,000名程度の実受験者数があった時期と比べ、近年は1万名前後の水準まで減少しています。背景として、公認会計士・税理士など他の会計系資格への志望者の分散や、資格取得ニーズの多様化などが一般的に指摘されることがありますが、日本商工会議所が公式に減少理由を説明しているわけではない点には留意が必要です。
長期的に見た受験者数の推移
日商簿記1級は、2000年代から2010年前後にかけては1回あたり1万5千名を超える実受験者数があった時期もありました。日本商工会議所が公表している過去のデータから、代表的な回を抜粋すると以下の通りです。
| 実施回(実施年月) | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第101回(2002年6月) | 13,672名 | 1,533名 | 11.2% |
| 第126回(2010年11月) | 17,027名 | 2,258名 | 13.3% |
| 第141回(2015年11月) | 9,087名 | 873名 | 9.6% |
| 第156回(2020年11月) | 8,553名 | 1,158名 | 13.5% |
2010年前後には1回あたり1万5千名を超える実受験者数がありましたが、2015年以降は1万名を下回る回が増え、直近5回でも9,000名台から10,000名台半ばで推移しています。長期的には受験者数が緩やかに減少してきた一方、合格率は9%台~21%台の範囲で回ごとに上下しており、受験者数の増減と合格率の水準に単純な相関があるとは言い切れません。
難易度の実態と学習のポイント
日商簿記1級は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目で構成され、2級までの範囲に比べて出題範囲が大幅に広がります。合格率が10%台前半という数字だけを見ると身構えてしまいますが、記念受験や準備不足のまま受験する人も一定数含まれるため、本番レベルの問題演習を継続的にこなした受験者に限れば、体感的な合格率はこの数字よりも高くなるという見方もあります。
日商簿記1級で得た知識を土台に、さらに上位の資格として公認会計士試験の受験者数・合格率の推移まとめ|短答式・論文式のデータで見る難易度への挑戦を視野に入れる受験者も少なくありません。
学習面では、直近の合格率の変動幅を踏まえ、標準的な学習時間の目安を確保したうえで、複数回分の過去問・模試で得点力を検証しておくことが望まれます。特に会計学・工業簿記は出題形式が独特なため、早い段階で本試験形式の問題に触れておくことが有効です。
学習スケジュールを立てる際の考え方
出題範囲が広い日商簿記1級では、まず出題頻度の高い論点(連結会計、本社工場会計、標準原価計算など)から優先して学習し、直近数回分の過去問で本試験の出題傾向をつかむことが効果的とされています。そのうえで模試や答案練習で時間配分を確認し、得点源になりやすい分野を安定させてから、難易度の高い応用論点に学習時間を割り振るという進め方が一般的に勧められています。学習開始から受験までの期間は人によって幅がありますが、複数回分の過去問演習を通じて自分の得点の安定度を確認しながら、受験する回を決めるとよいでしょう。
受験のタイミングを考える
1級は6月・11月の年2回しか受験機会がないため、自分の仕事の繁忙期や学習の進み具合を踏まえて、どちらの回に照準を合わせるかをあらかじめ決めておくことが重要です。直近5回のデータでは、6月・11月のどちらが有利ということはなく、合格率は回によって入れ替わっています。目先の1回の合格率にとらわれるのではなく、過去問演習で自分の得点が安定してきたタイミングで受験することを優先する方が、結果的に合格に近づく考え方だといえるでしょう。
よくある質問
Q. 日商簿記1級はネット試験(CBT方式)で受験できるか。
2026年9月時点で、日商簿記1級はネット試験(CBT方式)を実施しておらず、年2回の統一試験(ペーパー方式)のみで実施されています。2級・3級とは実施方式が異なる点に注意してください。
Q. 日商簿記1級の合格率はなぜ回によって差が出るか。
出題範囲が広く、その回でどの論点が重点的に出題されたかによって受験者全体の得点分布が変わりやすいためと考えられます。単回の合格率だけで難易度を判断せず、複数回分のデータを参考にすることが大切です。
Q. 日商簿記1級の合格にはどの程度の学習が必要か。
個人差はありますが、簿記の学習経験がある人でも相応の学習時間を要するとされることが一般的です。必要な時間は教材や学習経験によって異なるため、あくまで目安として捉えたうえで自身の学習計画に落とし込むことをおすすめします。
Q. 日商簿記1級と2級では難易度にどの程度の差があるか。
日商簿記1級は2級までの範囲に加えて、会計学・原価計算の理論的な内容や、連結会計などの応用論点が加わり、出題範囲・難易度ともに大きく広がります。2級合格後、さらに相応の学習時間を確保して臨むのが一般的です。
まとめ
日商簿記1級は、直近5回の合格率が10.5%~21.2%と幅広く分布しており、単年度・単回の数字だけで難易度を判断するのが難しい試験です。受験を検討する際は、日本商工会議所が公表する複数回分のデータを確認したうえで、余裕を持った学習計画を立てることが重要です。

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