建設業経理士1級は、一般財団法人建設業振興基金が実施する検定試験で、「財務諸表」「財務分析」「原価計算」という3つの科目すべてに合格することで取得できる資格です。3科目それぞれの合格率は科目ごとに異なり、原価計算がもっとも合格率が低い傾向にあります。本稿では、建設業振興基金が公表している直近5回分の科目別データをもとに、受験者数・合格率の推移を整理します。建設業経理士は日商簿記と異なり、建設業特有の会計処理を専門に扱う資格であるため、建設会社の経理・財務部門で働く人からのニーズが高いことも特徴です。
受験者数・合格率の推移
建設業経理士1級は年2回(3月・9月)実施されており、「財務諸表」「財務分析」「原価計算」の3科目は別々の試験として実施され、それぞれ独立して合否が判定されます。合格した科目は5年間有効とされており、3科目すべてに合格することで1級の資格取得となります。本稿執筆時点(2026年9月)で確認できる最新のデータとして、第38回(2026年3月実施)までの直近5回分を掲載しています。建設業経理士1級・2級の有資格者数は、公共工事の入札に必要な経営事項審査(経審)の評点に反映される仕組みがあり、建設会社にとって社員の資格取得が経営上のメリットにも直結する点が、他の会計系資格にはない大きな特徴です。
財務諸表の合格率推移
| 実施回(年月) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第34回(2024年3月) | 1,349名 | 497名 | 36.8% |
| 第35回(2024年9月) | 1,317名 | 441名 | 33.5% |
| 第36回(2025年3月) | 1,347名 | 430名 | 31.9% |
| 第37回(2025年9月) | 1,439名 | 402名 | 27.9% |
| 第38回(2026年3月) | 1,480名 | 445名 | 30.1% |
財務分析の合格率推移
| 実施回(年月) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第34回(2024年3月) | 1,179名 | 540名 | 45.8% |
| 第35回(2024年9月) | 1,064名 | 288名 | 27.1% |
| 第36回(2025年3月) | 1,235名 | 326名 | 26.4% |
| 第37回(2025年9月) | 1,278名 | 345名 | 27.0% |
| 第38回(2026年3月) | 1,279名 | 367名 | 28.7% |
原価計算の合格率推移
| 実施回(年月) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第34回(2024年3月) | 1,630名 | 328名 | 20.1% |
| 第35回(2024年9月) | 1,619名 | 326名 | 20.1% |
| 第36回(2025年3月) | 1,702名 | 422名 | 24.8% |
| 第37回(2025年9月) | 1,608名 | 284名 | 17.7% |
| 第38回(2026年3月) | 1,668名 | 376名 | 22.5% |
データから読み取れる傾向
科目によって合格率の水準が大きく異なる
直近5回の平均で見ると、財務諸表が30%前後、財務分析が30%台前半、原価計算が20%台前半と、原価計算がもっとも合格率が低い科目になっています。3科目すべてに合格する必要がある1級では、原価計算が最大の関門になりやすいことがうかがえます。特に第37回(2025年9月)は原価計算の合格率が17.7%まで落ち込んでおり、財務諸表・財務分析と比べても厳しい回であったことが分かります。
財務分析は年度による変動が大きい
財務分析の合格率は第34回の45.8%から第35回には27.1%まで大きく低下しており、他の2科目より年度ごとの振れ幅が目立ちます。ただし建設業振興基金は出題難易度の変更について公式にコメントしていないため、こうした変動の理由を断定することはできません。複数回分のデータを確認し、平均的な水準感を踏まえて対策時期を計画することが重要です。
3科目合計で見た合格のハードル
仮に3科目それぞれの合格率をそのまま掛け合わせて考えると、3科目に一発で合格する確率はごくわずかになります。実際には多くの受験者が複数回に分けて1科目ずつ合格を積み重ねていくため、この掛け合わせた数字がそのまま「1級全体の合格率」を意味するわけではありませんが、1級の取得には相応の年数を見込んでおく必要があることの目安にはなります。
受験者数はやや増加傾向
受験者数を科目別に見ると、財務諸表は第34回の1,349名から第38回には1,480名、財務分析は1,179名から1,279名、原価計算は1,630名から1,668名と、いずれも直近5回でゆるやかな増加傾向にあります。建設業界における経理・財務担当者への資格取得ニーズが底堅く続いていることがうかがえますが、増加の背景について建設業振興基金が公式に説明しているわけではないため、あくまで結果としての数字の動きとして捉えるべきでしょう。
難易度の実態と2級との違い・学習のポイント
建設業経理士2級は「財務諸表」「財務分析」を含む1つの試験として実施され、1回の受験ですべての科目の合否が決まるのに対し、1級は科目ごとに別試験として実施され、3科目すべてに合格するまで複数回に分けて受験できる仕組みになっています。1科目ずつ計画的に合格を積み重ねられる点は1級ならではのメリットですが、3科目の合格状況を自分で管理し、有効期限内に揃える必要がある点には注意が必要です。
簿記の知識が土台となる点は共通しており、日商簿記1級の受験者数・合格率の推移まとめ|なぜ難関資格と言われるのかと学習内容が重なる部分も多いため、日商簿記1級の学習経験がある人は建設業経理士1級の原価計算科目に取り組みやすいといわれています。
原価計算がもっとも合格率が低い科目であることを踏まえると、3科目を同時に受験するよりも、まず財務諸表・財務分析から着手し、原価計算に集中して取り組む時間を別途確保する学習計画が有効と考えられます。また、建設業会計は工事進行基準や工事原価の按分など、一般の商業簿記とは異なる独自のルールが多いため、市販の教材も建設業経理士に特化したものを選ぶと理解が進みやすくなります。日商簿記2級程度の基礎知識がある人でも、建設業特有の勘定科目や原価計算の考え方には慣れが必要なため、早めに過去問演習に着手して出題パターンをつかんでおくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 建設業経理士1級はどの科目から受験するのがよいか。
3科目に優先順位の指定はなく、どの科目から受験しても構いません。ただし公表データでは原価計算の合格率が他の2科目より低い傾向にあるため、原価計算により多くの学習時間を確保できるよう、受験の順番や時期を調整することをおすすめします。
Q. 建設業経理士1級に合格した科目には有効期限があるか。
合格した科目は5年間有効とされています。有効期限内に残りの科目にも合格しないと、期限が切れた科目は再度受験し直す必要があるため、3科目の合格状況と有効期限は自分で管理しておくことが大切です。
Q. 建設業経理士2級を持っていれば1級の試験は免除されるか。
2級の資格を保有していても、1級の科目試験が免除されることはありません。1級は2級とは別の試験として、財務諸表・財務分析・原価計算の3科目にあらためて合格する必要があります。
Q. 建設業経理士1級は経営事項審査(経審)にどう関係するか。
建設業経理士1級・2級の有資格者数は、公共工事の入札参加に必要な経営事項審査の評点算定要素の一つとされています。ただし評価の仕組みは制度改定により変わる可能性があるため、詳細は国土交通省や各都道府県の最新の公式情報を確認してください。
Q. 建設業経理士1級は独学でも合格できるか。
独学で合格を目指す人もいますが、原価計算など建設業特有の論点は市販教材だけでは理解しづらい部分もあります。合格率が低めの科目については、通信講座や解説動画などを活用して理解を補うことも有効な選択肢の一つです。
まとめ
建設業経理士1級は、財務諸表・財務分析・原価計算という3つの科目試験にすべて合格することで取得できる資格で、科目によって合格率の水準が異なります。直近5回のデータでは原価計算の合格率がもっとも低く、20%台前半で推移していることから、この科目に重点を置いた学習計画が合格への近道といえるでしょう。最新の試験日程や科目免除制度については、必ず建設業振興基金の公式サイトで確認してください。

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