兼務役員や、複数の会社から役員報酬・給与を受け取っている人について、「それぞれの会社で社会保険料を計算すればよいのか」と質問されることがあります。2つ以上の事業所でそれぞれ社会保険の加入要件を満たす場合には、通常の手続きとは異なる「二以上事業所勤務者」としての手続きが必要になります。
二以上事業所勤務者とは
二以上事業所勤務者とは、2つ以上の事業所でそれぞれ健康保険・厚生年金保険の被保険者要件を満たしている人のことです。たとえば、複数の会社の役員を兼務している人や、本業のほかに労働時間・賃金の要件を満たす副業先がある人などが該当します。この場合、本人がいずれかの事業所を管轄する年金事務所・保険者を選択し、「所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。
| 項目 | 内容 |
| 対象 | 2つ以上の事業所でそれぞれ社会保険の加入要件を満たす人 |
| 必要な届出 | 所属選択・二以上事業所勤務届(本人が選択した年金事務所等へ提出) |
| 保険料の計算 | 各事業所の報酬月額を合算して標準報酬月額を決定し、報酬額に応じて按分 |
保険料はどのように按分されるのか
二以上事業所勤務者の標準報酬月額は、各事業所から受け取る報酬を合算した金額をもとに決定されます。決定された保険料は、各事業所の報酬額の比率に応じて按分され、それぞれの事業所が自社の負担分を給与から控除し、選択された年金事務所等に納付する仕組みになっています。事業所ごとに個別に標準報酬月額を計算するわけではない点が、通常のケースとの大きな違いです。
実務上、事業所側で気をつけたいこと
兼務役員や副業先の従業員がこの届出の対象になる場合、届出が遅れると保険料の計算や控除額に誤りが生じやすくなります。役員報酬の変更や新たな兼務が発生した際には、本人に二以上事業所勤務者に該当する可能性がないかを確認し、該当する場合は速やかに届出を行うよう案内することが望まれます。
よくある質問
Q. 二以上事業所勤務届は、どちらの会社が提出するのか。
A. 届出は本人が行うものですが、実務上は各事業所の担当者が必要な情報(報酬額など)を提供し、本人の届出をサポートする形で進めることが一般的です。
Q. 選択する年金事務所は自由に決められるのか。
A. 本人が2つ以上の事業所の中から、いずれかを管轄する年金事務所・保険者を選択できます。一般的には主たる勤務先(報酬額が多い、勤務時間が長いなど)を選ぶケースが多く見られます。
Q. 選択後、事業所を追加した場合は再度届出が必要か。
A. 新たに3つ目の事業所で加入要件を満たすことになった場合など、状況に変化があった場合は、あらためて届出内容の変更手続きが必要になります。
まとめ
複数の勤務先を持つ働き方は、正社員だけでなく派遣社員にも広がっています。派遣労働者の社会保険手続きについては、別記事「労働者派遣における社会保険加入、派遣元・派遣先どちらが手続きするか」もあわせてご確認ください。

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