振込手数料はどちらが負担する?インボイス制度・取適法から見る実務上の注意点

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請求書に「振込手数料は貴社にてご負担ください」と書かれていて、実際に代金から手数料分を差し引いて振り込んだ経験がある経理担当者は多いはずです。この振込手数料の負担について、インボイス制度上どう処理すればよいのか、また下請取引では負担させてよいのかを、あわせて整理しておく必要があります。

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振込手数料を差し引いて支払う場合の考え方

買主が振込手数料を負担する代わりに、売買代金から手数料相当額を差し引いて振り込む取引は広く行われています。この場合、差し引かれた手数料相当額は、売主から見ると「代金の一部を値引き(売上値引き)した」ことになり、買主から見ると「仕入先の代わりに振込手数料を立替払いした」と整理するのが一般的な考え方です。

インボイス制度上の取り扱い

売主が値引きとして処理する場合、本来は「返還インボイス」の交付が必要になりますが、値引き額が1万円未満であれば、返還インボイスの交付義務が免除される「少額な返還インボイスの交付義務免除」の特例があります。振込手数料相当額はほとんどのケースで1万円未満に収まるため、この特例を使えば、売主は個々の振込のたびに返還インボイスを発行する事務負担を避けられます。

実務上の処理パターン

処理パターン内容
売上値引きとして処理振込手数料相当額を売上値引きとして計上し、少額特例により返還インボイスは省略
支払手数料として処理買主が負担した手数料を、売主が「支払手数料」として経費計上する処理方法(実務上の簡便的な扱いとして用いられることがある)

取適法(下請法)での禁止事項に注意

下請取引においては、取適法(改正下請法)により、下請代金の振込にかかる手数料を下請事業者(受注者)に負担させることが禁止されています。従来の商慣行として振込手数料を差し引いて支払っていた場合でも、下請取引に該当する場合は、この取り扱いを見直す必要があります。自社の取引が下請法の対象になるかどうかを、資本金基準や取引内容から確認しておきましょう。

よくある質問

Q. 振込手数料分を差し引いて支払う契約は、下請法対象でなければ問題ないか。

A. 下請法(取適法)の対象取引に該当しない場合は、契約や商慣行にもとづいて振込手数料の負担者を取り決めること自体は可能です。ただし、契約書や請求書に負担者を明記し、トラブルを防ぐことが望まれます。

Q. 振込手数料相当額が1万円を超える場合はどうなるか。

A. 少額な返還インボイスの交付義務免除の対象外となるため、原則どおり返還インボイスの交付が必要になります。高額な取引の値引きについては、通常のインボイス実務にもとづいて対応しましょう。

Q. 下請法の対象かどうかはどこで確認できるか。

A. 資本金の額や取引内容にもとづく基準が公正取引委員会・中小企業庁の資料で示されています。自社の取引が該当するか不明な場合は、専門家や公正取引委員会の相談窓口に確認するとよいでしょう。

振込手数料負担の実務対応の変化

これまで多くの企業では、請求書に「振込手数料は貴社にてご負担ください」と一文を添えるだけで、売手側が振込手数料相当額を差し引かれることを事実上受け入れてきました。しかし、下請取引に該当する場合は、取適法上、買手側(発注者)が振込手数料を差し引くこと自体が原則として認められなくなります。振込手数料を売手側に負担させたい場合は、あらかじめ双方の合意を得たうえで、契約書や基本取引条件に明記しておくなど、一方的な差し引きにならない形での運用が必要です。自社が発注側・受注側のどちらの立場であっても、取引先ごとの振込手数料の取り扱いを再確認しておくとよいでしょう。

まとめ

振込手数料の負担は、一般の取引であればインボイス制度の少額特例を使って事務負担を抑えられますが、下請取引に該当する場合は取適法により下請事業者への負担が禁止されている点に注意が必要です。取適法の手形払い禁止などその他の変更点については、別記事「取適法(改正下請法)2026年1月施行で手形払いが禁止に|下請取引の支払実務チェックポイント」もあわせてご確認ください。

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