定年退職後にそのまま再雇用され、給与が下がる従業員は多くいますが、「給与が下がったのに、しばらく前の高い給与を基準にした社会保険料が引かれ続ける」という状態を避けるための特別な手続きがあります。それが「同日得喪」と呼ばれる取り扱いです。
通常の随時改定では対応が遅れる
通常、給与が変動して標準報酬月額を見直す場合は「月額変更届(随時改定)」を提出しますが、これは変動後の給与を3か月分確認してから改定するため、実際に保険料が変わるまでに数か月のタイムラグが生じます。定年退職を機に給与が大きく下がる場合、このタイムラグの間、実態より高い保険料が控除され続けることになり、従業員の手取りに大きく影響します。
同日得喪とは
同日得喪は、60歳以上の従業員が定年退職し、退職日の翌日に再雇用(継続雇用)される場合に限り、いったん資格喪失の手続きを行い、同じ日付で新たな標準報酬月額にもとづく資格取得の手続きを行うことができる特例です。これにより、再雇用後の給与にもとづく標準報酬月額を、退職直後の月から適用させることができ、保険料の負担が実態に早く合うようになります。
| 項目 | 通常の随時改定 | 同日得喪 |
| 対象 | 固定的賃金の変動があった全ての被保険者 | 60歳以上で定年退職後に継続再雇用された人に限る |
| 改定までの期間 | 変動後3か月分の給与を確認してから改定 | 再雇用当月から新しい標準報酬月額を適用可能 |
| 必要な手続き | 月額変更届の提出 | 資格喪失届と資格取得届を同時に提出 |
実務上の注意点
同日得喪の対象となるのは、あくまで60歳以上の定年退職者が、退職日の翌日に空白なく再雇用されるケースに限られます。定年後、しばらく間を空けてから再雇用する場合や、60歳未満での契約変更には適用されないため、対象となるかどうかを事前に確認しておく必要があります。また、就業規則上の定年退職の規定と、再雇用契約の開始日を明確に記録しておくことが、手続きをスムーズに進めるうえで重要です。
よくある質問
Q. 60歳未満で役職定年により給与が下がった場合も同日得喪を使えるか。
A. 同日得喪は60歳以上の定年退職後の継続再雇用に限定された特例です。60歳未満の役職定年による給与低下については、通常の月額変更届(随時改定)で対応することになります。
Q. 再雇用後の給与が下がらない場合でも同日得喪の手続きは必要か。
A. 同日得喪は主に給与が下がるケースで活用される制度ですが、定年退職と再雇用という雇用契約の区切りがある以上、資格喪失・取得の手続き自体は行うのが基本です。
Q. 同日得喪の手続きは、年金事務所への届出だけで完了するか。
A. 健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合側にも同様の届出が必要です。年金事務所と健康保険組合の両方に確認しながら手続きを進める必要があります。
まとめ
65歳までの継続雇用や、それ以降の就業確保についても法律上の位置づけが整理されています。70歳までの就業確保措置については、別記事「高年齢者雇用安定法、70歳までの就業確保措置は義務?努力義務の中身を整理」もあわせてご確認ください。

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