「通勤手当は非課税だから、社会保険料の計算にも含めなくてよいのでは」という誤解は、給与計算の担当者の間でも意外とよく見られます。税金の取り扱いと社会保険料の取り扱いはルールが異なるため、混同しないよう整理しておく必要があります。
通勤手当は原則として標準報酬月額に含める
所得税の計算では、一定額までの通勤手当が非課税とされていますが、これはあくまで税務上の取り扱いです。社会保険(健康保険・厚生年金保険)の標準報酬月額を算定する際の「報酬」には、労働の対償として支給されるものが広く含まれ、通勤手当も原則としてこの報酬に含めて計算する必要があります。税務上非課税であることと、社会保険料の計算対象から外れることとは、まったく別の話です。
| 項目 | 所得税 | 社会保険料 |
| 通勤手当の扱い | 一定額まで非課税 | 原則として標準報酬月額の算定対象に含める |
| 判断基準 | 通勤手当の非課税限度額(通勤方法・距離により異なる) | 労働の対償として支給されるものかどうか |
通勤手当の支給方法による違い
毎月定額で通勤手当を支給している場合は、その金額をそのまま標準報酬月額の算定に含めます。一方、6か月分の定期代をまとめて支給している場合は、6等分した金額を1か月あたりの通勤手当として、毎月の報酬に算入して計算するのが基本的な取り扱いです。まとめて支給した月にその全額を計上してしまうと、その月だけ標準報酬月額が大きくぶれてしまうため、按分の考え方を正しく理解しておく必要があります。
定期代が変更になった場合の対応
転居等により通勤経路が変わり、通勤手当の額が変更になった場合、その変更が固定的賃金の変動に該当し、変動後の報酬が一定以上変わる見込みがあれば、月額変更届(随時改定)の対象になることがあります。通勤手当の変更だけでも標準報酬月額の改定につながる場合がある点を、給与計算の実務担当者間で共有しておくことが重要です。
よくある質問
Q. 自転車通勤で通勤手当を支給していない場合、社会保険料の計算に影響はあるか。
A. 通勤手当を支給していなければ、当然ながらその分の報酬への算入もありません。通勤手当の有無・金額は各社の賃金規程によって異なるため、自社の規程内容にもとづいて計算することになります。
Q. 在宅勤務で出社日数が減り、実費精算方式に変更した場合はどうなるか。
A. 実費精算方式に変更し、毎月の支給額が変動するようになった場合、変動後の平均額をもとに標準報酬月額の見直しが必要になることがあります。固定的賃金の変動に該当するかどうかを個別に確認する必要があります。
Q. 通勤手当の非課税限度額を超えた部分は、社会保険料の計算でどう扱われるか。
A. 非課税限度額を超えた部分は所得税の課税対象となりますが、社会保険料の計算では、非課税限度額を超えるかどうかにかかわらず、通勤手当として支給された金額全体が原則として報酬に算入されます。
まとめ
通勤手当のように、固定的賃金の変動が標準報酬月額の改定につながるケースは、算定基礎届や月額変更届の実務と密接に関わります。算定基礎届の書き方については、別記事「算定基礎届とは?2026年度の書き方・提出期限・電子申請の流れ」もご確認ください。

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