上場企業を中心に適用が進んだ「収益認識に関する会計基準」ですが、中小企業の経理担当者からは「うちの会社も対応しないといけないのか」という質問をよく受けます。結論から言えば、多くの中小企業は現時点で強制適用の対象ではありませんが、間接的な影響には注意が必要です。
収益認識に関する会計基準とは
収益認識に関する会計基準は、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した、売上(収益)をいつ、いくらで計上するかについての包括的なルールです。従来の「出荷基準」「検収基準」といった実務慣行に加えて、契約内容を分析し、履行義務の充足に応じて収益を認識するという、より詳細な考え方が求められます。
中小企業への適用は任意
この基準は上場企業やその子会社・関連会社など、金融商品取引法の適用を受ける企業を中心に強制適用されていますが、中小企業の会計に関する指針や中小企業の会計に関する基本要領を採用している中小企業については、現時点で強制適用の対象にはなっていません。将来的に、上場企業等での適用状況を踏まえて、中小企業向けの会計指針に取り入れるかどうかが検討されるとされています。
中小企業でも間接的な影響が出るケース
| ケース | 想定される影響 |
| 取引先(上場企業)が収益認識基準を適用 | 契約内容の確認や、返品・値引きの取り扱いについて照会を受けることがある |
| 金融機関からの借入において連結子会社の決算に組み込まれる | 親会社の会計方針にあわせた資料提出を求められることがある |
| 自社の会計処理を任意で見直す場合 | 長期の請負契約やポイント制度がある場合、収益計上のタイミングの見直しが有用なことがある |
任意適用を検討する際のポイント
強制適用でなくても、長期の工事契約や、複数の商品・サービスを組み合わせた契約、ポイント付与制度がある場合などは、収益認識基準の考え方を参考にすることで、より実態に即した決算書を作成できる場合があります。ただし、任意で会計処理を変更する場合は、税務上の取り扱い(法人税法上の収益の計上時期)との整合性も確認する必要があるため、税理士に相談しながら進めることをおすすめします。
よくある質問
Q. 中小企業が収益認識基準を適用しないことに問題はないか。
A. 中小企業の会計に関する指針等を採用している場合、現時点では収益認識基準を適用しないこと自体に問題はありません。ただし、取引先からの要請があれば個別に対応を検討する必要があります。
Q. 収益認識基準を適用すると、税務申告の内容も変わるのか。
A. 会計上の収益計上時期と、法人税法上の収益計上時期は必ずしも一致しない場合があるため、適用する場合は税務申告への影響を税理士とあわせて確認する必要があります。
Q. 今後、中小企業にも強制適用される見込みはあるのか。
A. 現時点で強制適用の具体的な時期は示されておらず、上場企業等での適用状況を踏まえて今後検討されるとされています。最新の公表情報を確認することが大切です。
契約書のレビューで見ておきたい点
収益認識基準の考え方を参考にする場合、まず自社の主要な契約書を見直し、複数の履行義務(商品の販売と、その後の保守サービスなど)が一つの契約に含まれていないかを確認することが出発点になります。また、返品権付き販売や、リベート・値引きが事後的に発生する契約についても、収益をどの時点でいくら計上するかの考え方を整理しておくと、決算時の処理がスムーズになります。契約内容が複雑な取引が多い会社ほど、早めに顧問税理士や会計士に相談し、自社の実務に即した処理方針を固めておくことをおすすめします。
まとめ
収益認識に関する会計基準は、多くの中小企業にとって現時点では任意適用ですが、取引先の状況によっては間接的な対応が必要になることもあります。同じく適用範囲が話題になっている会計基準については、別記事「新リース会計基準とは?2027年4月適用開始で何が変わるか」もあわせてご確認ください。

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