毎年10月前後に行われる最低賃金の改定に合わせて時給や基本給を引き上げたものの、割増賃金(残業代)の単価を見直すのを忘れてしまう、というミスは給与計算の現場で意外と多く見られます。最低賃金の引き上げが割増賃金にどう影響するのか、あらためて確認します。
最低賃金が上がると割増賃金の単価も変わる
割増賃金は、1時間あたりの賃金額(賃金を所定労働時間数で割った金額)をもとに、時間外労働であれば25%以上、休日労働であれば35%以上、深夜労働であれば25%以上を割り増して計算します。最低賃金が引き上げられ、それに合わせて時給や月給を改定した場合、その1時間あたりの賃金額そのものが変わるため、割増賃金の単価も連動して見直す必要があります。
| 項目 | 確認すべきポイント |
| 時間給制の従業員 | 最低賃金改定にあわせた時給引き上げが、割増計算の単価に反映されているか |
| 月給制の従業員 | 月給を所定労働時間数で割った金額が最低賃金を下回っていないか |
| 固定残業代を採用している場合 | 固定残業代を除いた基本給部分だけで最低賃金を満たしているか |
固定給・固定残業代のケースで起こりやすい間違い
月給制の場合、基本給に加えて諸手当(精皆勤手当、通勤手当、家族手当などを除く)を含めた金額を所定労働時間数で割った額が、最低賃金額を上回っている必要があります。固定残業代(みなし残業代)を採用している場合は、固定残業代部分を除いた基本給相当部分だけで最低賃金を満たしているかを確認する必要があり、固定残業代を含めた総額でしか最低賃金をクリアできていないケースは、最低賃金法違反となるおそれがあります。
毎年の改定時に確認しておきたい実務フロー
最低賃金の改定は都道府県ごとに毎年発表されるため、複数の都道府県に事業所がある企業では、それぞれの最低賃金額を確認したうえで、給与規程・賃金テーブルの見直しと、給与計算ソフトに設定している割増賃金の計算単価の更新をあわせて行う必要があります。改定のたびにチェックリストを用意し、時給・月給・割増単価・固定残業代の内訳を一括で確認する仕組みを作っておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。
よくある質問
Q. 最低賃金額には、通勤手当や家族手当も含めて判定するのか。
A. 通勤手当、家族手当、精皆勤手当、賞与など一部の賃金は、最低賃金額と比較する際の賃金には含めないこととされています。基本的な月例賃金のうち、これらを除いた部分で判定します。
Q. 最低賃金を下回っていたことが後から発覚した場合、どう対応すればよいか。
A. 過去に遡って、実際に支払うべきであった賃金と実際に支払った賃金の差額を精算する必要があります。放置すると最低賃金法違反として是正勧告等の対象になる可能性があるため、早急な対応が必要です。
Q. 固定残業代の時間数を増やせば、基本給を上げなくても最低賃金に対応できるか。
A. 固定残業代を除いた基本給部分だけで最低賃金を満たす必要があるため、固定残業代の時間数を増やすだけでは対応にならない場合があります。基本給部分の水準そのものを確認する必要があります。
まとめ
賃金計算の正確性は、割増賃金の単価だけでなく、社会保険料の端数処理でも問われる場面があります。あわせて別記事「社会保険料の端数処理、給与計算でよくある計算ミスと正しい処理方法」もご確認ください。

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